[緒言]吸着には高分子構造の微細な違いが反映すると考えた。そこで本研究ではアミノ酸NCAの重合によって、各種ポリアミノ酸を合成して、その構造の違いと有機化合物の吸着傾向との関係を検討した。[2]実験 1)材料 ①ポリアミノ酸:各種アミノ酸のN-カルボキシ無水物(NCA)を合成し、それをモノマーとし、開始剤としてアミンを用いて重合して、ポリグリシン、ポリ(L-アラニン)、ポリ(L-バリン)、ポリ(L-ロイシン)、ポリ(L-イソロイシン)を得た。②吸着物質:各種アルコール、ベンゼン置換体、アセトニトリル、ジオキサン、DMF、デカンなどを用いた。2) 吸着実験 特別設計容器の底部に各種化合物を単独または混合物として置き、その蒸気をポリアミノ酸に所定時間さらした。吸着物質を酢酸エチルで抽出して、GC分析を行った。ポリアミノ酸の単位重量に対する化合物吸着量を計算した。3) ポリマーの分子形態 FTIRのATR法で求めた。4) 材料の表面積はガス吸着測定装置で測定した。[3]結果と考察 「ポリアミノ酸に対する3種のアルコール単独からの各化合物の吸着」各種ポリアミノ酸のそれぞれに対して、アルコール:エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールのそれぞれ単独について蒸気圧を変えて、40℃で吸着実験を行った。単層吸着と思われた7kPa圧の際の、各アルコールの吸着量を求めた。次の事が見出された。1)ポリグリシンには吸着量が極端に少ない。特に、1-プロパノール、2-プロパノールは測定にかからないレベルであった。2)ポリ(L-アラニン)のみが、1-プロパノールの吸着量が多い。α-らせんの側鎖メチル基とn-プロピル基との相互作用によると考えるべきである。3)ポリ(L-バリン)、ポリ(L-ロイシン)には、2-プロパノールが吸着しやすい。これは、イソプロピル基同士の相互作用と考えられた。
|