研究概要 |
水系洗浄の前処理として, 気相中での処理が可能な非平衡大気圧プラズマジェット利用することを検討した. プラズマ前処理の洗浄効果を調べるために, まず, ポリエステルフィルムにステアリン酸汚れを付着させ, 顕微鏡画像処理法によりフィルムに付着した汚れを二値化する方法で, 洗浄前後の汚れ量を求めて洗浄性を評価した. 洗浄前のプラズマ処理により, 水, アルカリ水溶液および界面活性剤水溶液, いずれの洗浄液中でも汚れ除去が促進される傾向が認められた. 次に, ステアリン酸汚れをポリエステル布に付着させて人工汚染布を作製し、洗浄前後の表面反射率変化から洗浄性評価を行ったところ、洗浄前のプラズマ処理によりステアリン酸汚れの除去が促進され, 再付着が抑制される結果が得られた. ポリエステル布の洗浄性向上はステアリン酸汚れのみならず, オレイン酸汚れやカーボンブラック汚れでも確認された. プラズマ処理前後のポリエステルおよびステアリン酸膜に対する水の接触角を測定した結果, いずれもプラズマ処理後のほうが小さく、表面親水化が起こっていることが確認された. このことから,プラズマ処理により汚れや基質が親水化され, 洗浄媒体である水にぬれやすくなって洗浄が有利になったと考えられる. さらに, 布に黄色ぶどう状球菌を付着させ, プラズマ処理前後の生菌数を調べたところ, プラズマによる殺菌効果が確認された。洗浄前の被洗物のプラズマ処理により, 汚れ除去とともに菌の繁殖や臭いの発生を抑えて衣服の清潔を維持できる可能性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
ポリエステル以外の布を用いて人工汚染布を作成し, プラズマ処理の洗浄効果を調べる. また、水晶振動子を用いてモデル洗浄系を作製し、洗浄前後の汚れ重量を定量する方法で、プラズマ処理効果をより明らかにする.プラズマ殺菌への処理時の熱の影響を明らかにするために,カビに対する効果を調べる.さらに, プラズマジェット処理による布の損傷の有無を調べるため, 処理前後の布の黄変や引張強伸度, 並びに染色堅牢度を測定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は海外調査のための旅費枠を計上していたが、海外出張を見送ったので未使用額が発生した。 前年度の未使用額を合わせてモデル洗浄系を構築するための水晶振動子計測システムを購入する. 洗浄実験および布の損傷試験を行うための布,試薬,ガラス器具を購入する. 抗菌性試験は依頼試験とし,そのための検査料に使用する. 研究成果発表のための学会出張費(国内2回)および論文別刷代に使用する.
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