研究実績の概要 |
モデル汚れとしてカーボンブラック、オレイン酸またはステアリン酸を各種平織布に付着させて人工汚染布を作製し, 大気圧プラズマジェット処理を行った。各種洗浄水溶液中で人工汚染布と原白布を洗浄し、表面反射率法により汚れの脱離性と再付着性を評価した。さらに、実用系での効果があるかどうかを調べるため, ISO標準ドラム型洗浄機を用いた洗浄実験も行った。いずれの場合も疎水性の大きい繊維や汚れでは洗浄前のプラズマ処理により汚れの除去が促進され, 再付着が抑制される傾向が認められた。この効果はプラズマ処理により繊維表面や汚れが親水化され, 洗浄媒体である水にぬれやすくなったためと考えられる。また, プラズマ処理による殺菌効果、布の損傷や変退色がないことが確認され, 洗浄前のプラズマ照射は汚れ除去とともに菌の繁殖や臭いの発生を抑えて, 衣服の清潔を維持できることが示唆された。 次に、形態の異なる高分子基質の前処理としての利用の観点から、PETのフィルム,メッシュおよび布を用い, 油汚れのモデルであるステアリン酸を付着させた. プラズマ照射を行った後,洗浄液中に垂直に浸漬し, 磁気撹拌子を用いて5分間の撹拌洗浄を行った。フィルムでは, 洗浄前後の顕微鏡画像を撮影し,画像処理ソフトを用いた二値化処理により汚れ量を抽出する方法で汚れの除去率を求めた。メッシュおよび布では, ステアリン酸に色素を混合し,最大吸収波長でのクベルカムンク関数K/Sから汚れの除去率を算出した。その結果,いずれの洗浄性評価法でも洗浄前にプラズマ処理を行うと汚れの脱離が促進されるという結果が得られた。 さらに, 水晶振動子上にPET膜を作成し,付着したステアリン酸の洗浄前後の質量変化を追跡してプラズマ処理効果を調べた。その結果,洗浄前のプラズマ処理が汚れ除去を促進させることが確認された。
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