東日本大震災に端を発する電力不足で、省エネルギー(省エネ)は我が国の緊急かつ重要なテーマとなっている。特に、冷暖房が必要となる季節における電力不足は深刻である。省エネ対応製品が増えてきたとは言え、オフィスビルや家庭内でエアコンが締める電力消費の割合は依然高い(エネルギー白書2012)。一方で、エアコンの風を苦手とする人は多く、自律神経機能を乱したり乾燥で喉を痛めたりする一因となっている。 これらの問題を解決する冷暖房方式の一つとして、輻射熱の自然対流で室内の温度を調節する輻射式冷暖房システムがある。輻射式冷暖房システムは、低電力で24時間熱源を運転し冷温や温水を循環させるため、エアコンより省電力化が可能である。また、構造的に風を出さないため、快適だと言われている。しかし、その快適性に関しては科学的なエビデンスが得られていない。 そこで本研究では、エアコンと輻射式冷暖房システムの快適性の違いを定量的かつ客観的に評価し、個人毎に最適化を行い省エネと快適性を両立する室内環境をテーラーメイド的に実現することを目指し、生理心理学に基づく実験を実施した。 平成25年度は、まず前年度実施した夏期冷房実験のデータを詳細に解析し、生理心理指標の経時変化と空調方式の交互作用に関する統計的有意差の有無を調べた。その結果、主に知覚時間、脳波振幅(特にβ波とγ波)で有意差が認められた。この成果は、学会2件、セミナー1件で発表した。次に、暖房に関する同様の実験を1月に実施した。プレリミナリーではあるが、脳波振幅(今回は特にα波)で冷房実験と同様の有意差が認められた。 以上の結果より、冷房、暖房の双方で本研究の有効性および輻射式冷暖房システムの快適性を示すことができた。今後は、被験者を増やしたり、実験環境を変えたりするなどし、省エネと快適性を両立する室内環境を実現したい。
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