研究課題/領域番号 |
24650481
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
渡邊 浩幸 高知県立大学, 健康栄養学部, 教授 (30369425)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 食品 / 乾燥 / 保存 / 加工食品 / 風味 |
研究概要 |
1.野菜類の低温乾燥を行い、風味成分や含有する成分の定量を行い、保存下における食品成分の保持と機能性評価の準備を行った。食品の乾燥は、通風乾燥法と比較して、低温冷風乾燥法と凍結乾燥法について比較検討した。その結果、食品の乾燥保存として、凍結乾燥法を使用すると、食品成分の保持は可能であるが、風味や食品成分の低下、pHの変化が起こることが示された。一方、低温乾燥法では、風味や食品成分の低下はほとんど見られなかった。また、低温冷風乾燥は、食品中の自由水を結合水に変えることが明らかとなった。このことは、これまでに認識されなかった乾燥法による食品成分の低下防止を可能とした。そこで、通風乾燥、低温乾燥及び凍結乾燥を行ったニラ及びタマネギの乾燥品を作成し、動物への投与を行い、機能性評価を行う。 2.保存食として、イチイ科カヤ属の常緑針葉樹カヤの種子を用い利用可能な食品成分を抽出することを検討した。カヤ種子には、構成する食品成分の50%以上を脂質が占め、他にタンパク質が10%ほど含まれる。この研究では、圧搾により脱脂したカヤ種子よりタンパク質の抽出法を検討し、災害食としての加工食品への応用の可能性を明らかにすることを目的として行った。脱脂カヤ種子を粉砕後に乾燥し、加水分解を行ってアミノ酸組成分析を行い、さらにタンパク質を抽出した。カヤ種子タンパク質の構成アミノ酸は、牛赤身肉のアミノ酸組成に似ており、Lys、Argや分岐鎖アミノ酸に富む組成であった。SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果では、抽出されたタンパク質は、分子量がおよそ30,000及び15,000のバンドを示す同じ泳動パターンを示したが。これらのことは、カヤ種子より、新規タンパク質の抽出を可能とし、食糧資源確保と保存食への応用を可能とした。次年度において、動物への投与を行い、タンパク質の評価を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.野菜類の乾燥後の成分含量測定を予定通りに実施し、通常、食品乾燥で行われている通風乾燥法と比較して、低温冷風乾燥及び凍結乾燥法において、野菜類が含有する食品成分量の低下がないことを明らかにしている。さらに、低温冷風乾燥においては、風味や食品成分の低下が凍結乾燥法よりもさらに小さいことを明らかにしている。 2.乾燥後の食品の物理的変化として、水分及びpHの変化において、通風乾燥及び凍結乾燥の2種類の乾燥法と比較して、pHの変化及び水分含量の低下が少ないことを明らかにした。すなわち、1年目のメカニズム解析をほぼ予定通りに終了した。 3.新規食品素材としてカヤを取り上げ、非常・災害食のための加工食品素材とすることを提案した。カヤには、10%程のタンパク質を含み、アミノ酸分析からその組成は、非常に良質であること、疲労や肝機能改善をもたらすアミノ酸含量が高いことを示した。
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今後の研究の推進方策 |
1.低温冷風乾燥後の水、糖及びタンパク質の物理化学的存在形態を評価し、風味や食品成分の低下が少なくなるメカニズムについて、さらに検討を加える。 2.野菜類に含まれる酵素が、低温冷風乾燥後にも安定化されるメカニズムの解析を行う。タンパク質のガラス化の有無についての評価を実施する。 3.低温冷風乾燥後の食品に付着する微生物の数の変化について検討し、低温冷風乾燥における食品衛生の課題について整理する。 4.予備的な動物実験を行い、低温冷風乾燥野菜類の機能性保持について評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
食品中の風味や成分保持のメカニズム研究内容の一部を追試として平成25年度に実施するために、繰越金が発生した。これについては、今年度のメカニズム研究費として使用するが、平成24年度と25年度の研究計画を変更するものではない。 研究費については、研究に必要とする試薬及び器具等の購入を主とし、一部、学会発表のための交通費や研究用文献類の購入を予定している。
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