研究課題/領域番号 |
24650481
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
渡邊 浩幸 高知県立大学, 健康栄養学部, 教授 (30369425)
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キーワード | 食品 / 乾燥 / 保存 / 加工食品 / 風味 |
研究概要 |
1.凍結乾燥法を使用すると、食品成分の保持は可能であるが、風味や食品成分の低下、pHの変化が起こることが示された。一方、低温冷風乾燥法では、風味や食品成分の低下はほとんど見られなかった。その理由として、凍結乾燥法では、乾燥後の細胞の野菜の細胞の破裂が認められたが、低温冷風乾燥法では、これらの現象は認められなかった。これは、凍結乾燥において、凍結による細胞内水分の容積増加によるものと考えられた。このことにより、細胞内酵素や細胞内溶液が漏れ出て、乾燥後の品質の変化が引き起こされたものと考えられた。 ダイコンの風味や辛みを生み出すイソチオシアネートは、ダイコン中に存在するグルコシノレートが酵素ミロシナーゼの作用を受けて生成される。そこで、通風乾燥法と比較して、低温冷風乾燥法や凍結乾燥法で処理したダイコンについて、残存するイソチオシアネートの量について比較検討した。イソチオシアネートは、乾燥した大根に水を添加して生成させた。その結果、低温乾燥法の処理をしたダイコン中には、最も多量のイソチオシアネートが存在した。このことは、低温乾燥処理は、ダイコンの風味や辛みの成分を保持し、加水によって、ダイコン独自の風味や辛みを生み出すことができることが明らかとなった。 2.保存食として、イチイ科カヤ属の常緑針葉樹カヤの種子を用い利用可能な食品成分を抽出することを検討した。カヤ種子をクロロホルム:メタノール(2:1)混合液で抽出し、水層について、ポリフェノール及び抗酸化能を測定した。その結果、ポリフェノール量(クロロゲン酸mg/試料100g)は、8257.5±159.6、抗酸化能(μmol トロロックス/試料100g)は、695.9±1.3 (n=3)を示した。これらの値は、カヤ種子をタンパク質源として摂取した場合、抗酸化の機能性を期待することができることを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.野菜類の乾燥後の成分含量測定を予定通りに実施し、通常、食品乾燥で行われている通風乾燥法と比較して、低温冷風乾燥及び凍結乾燥法において、野菜類が含有する食品成分量の低下がないことを明らかにしている。さらに、低温冷風乾燥においては、風味や食品成分の低下が凍結乾燥法よりもさらに小さいことを明らかにしている。そのメカニズムとして、凍結乾燥において、凍結による細胞内水分の容積増加が起こり、細胞内酵素や細胞内溶液が漏れ出て、乾燥後の品質の変化が引き起こされるが、低温乾燥法ではこれらのことが無いことが見いだされた。 2.新規食品素材としてカヤを取り上げ、非常・災害食のための加工食品素材とすることを提案した。タンパク質含量の高いカヤ種子には、多量のポリフェノールを含み、これによる抗酸化機能が高いことが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
1.25年度に実施できなかった低温冷風乾燥乾燥後における乾燥野菜の安定化のメカニズムについて、ガラス化を指標として実施する。 2.低温冷風乾燥野菜の機能性について、動物実験を実施して他の乾燥法と比較して行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ダイコン以外の食品中の風味や成分保持のメカニズム研究内容の一部を追試として平成26年度に実施するために、繰越金が発生した。 これについては、今年度のメカニズム研究費として使用するが、平成26年度の研究計画を変更するものではない。研究費については、研究に必要とする試薬及び器具等の購入を主とし、一部、学会発表のための交通費や研究用文献類の購入を予定している。
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