研究課題/領域番号 |
24650482
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
永井 竜児 東海大学, 農学部, 准教授 (20315295)
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研究分担者 |
川上 茂樹 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (90432509)
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キーワード | メイラード反応 / 褐変反応 / AGEs / メラノイジン / 味噌 |
研究概要 |
食品の加熱調理および長期保存に伴い、メイラード反応後期生成物(AGEsもしくはmelanoidins)が生成する。我が国では特に味噌や醤油、海外ではコーヒーやビールなどの褐色色素の形成、香気及び味覚成分として長きにわたりAGEsの研究が行われてきた。しかし最近、AGE高含有食品を継続的に摂取すると糖尿病の発症率が増加するという報告が数多くなされ、我が国の伝統的食品の安全性に不安と疑問が投げかけられている.そこで本研究ではAGEsの定量、生物学的影響に対する評価を行い、安全性評価のみならず、新たな品質評価の指標を構築することを目的としている。 前年度、タンデム質量分析装置で数種の味噌中AGEsの定量が可能となったが、味噌中タンパクは発酵に伴って分解しているため、味噌自体を免疫しても抗体の作製は困難であった。味噌や醤油の熟成過程において、糖の分解からグリセルアルデヒドの生成を推測した。そこで、グリセルアルデヒド修飾したウシ血清アルブミン(GLA-BSA)をマウスに免疫し、グリセルアルデヒド修飾したKeyhole limpet hemocyanin (GLA-KLH)陽性、未修飾のBSA陰性の抗体産生ハイブリドーマを探索した結果、3株のグリセルアルデヒド由来AGEに対するモノクローナル抗体産生細胞が得られた。これら抗体はグリセルアルデヒド修飾タンパクに対して特異的に反応することを確認し、現在、味噌及び醤油タンパクとの反応性を評価している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
味噌タンパクをSDS-PAGEで解析した結果、発酵に伴って免疫抗原となるような分子量の高いタンパクが消失していることが確認された。そのため、タンデム質量分析装置(LC-MS/MS)を用いて、味噌中の各種既知AGEs構造の分析法を確立した。さらに、発酵中に生成すると考えられるグリセルアルデヒドからAGEsが生成すると予測し、グリセルアルデヒド由来AGEs構造に対するモノクローナル抗体の作製に成功した。したがって、競合ELISAによる食品中AGE測定のための土台ができたと考えられる。しかし、平成25年度には、熟成期間の異なる味噌、醤油、その他、AGEs生成が関与することが知られるコーヒー、ビール、ワイン、各種保存食品においてAGEsを測定する予定であったが、上記抗体を用いた測定系の確立が遅れたため、AGEs測定・官能評価で調べた各種食品の香気・風味とAGEs含量との相関性等の検討に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
新たに得られたグリセルアルデヒド由来AGEs構造に対するモノクローナル抗体と、熟成期間の異なる味噌、各種醤油との反応性を確認する。また、α位をCbzで保護したリジンとグリセルアルデヒドを保温した後、生成物を高速液体クロマトグラフィーで分取し、どの画分が抗体と反応するかを競合法ELISAで確認し、抗体のエピトープを解析する。単離された抗体と反応性を示す画分は精密質量分析装置及びNMRで構造解析を行う。次に同位体標識2SCやCMLを合成した申請代表者らの手法(Nagai RらJ. Biol. Chem. 282. 34219-34228, 2007)を参考に、同様の操作をC13標識されたアミノ酸を購入し、C13標識AGEsを合成する。本AGEsを内因性標準物質として用い、味噌・醤油等の食品中および、食品を摂取した後の生体成分中AGEsの定量系を確立する。経口的に生体にAGEsが投与された場合、血液及び臓器よりそのAGEsを検出するにはLC-MS/MSによる高感度分析が必要となり、C13標識されたAGEsは平成26年度に実施する動物実験およびヒト介入試験に必須となる。
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