食品の加熱調理および長期保存に伴い、メイラード反応後期生成物(AGEsもしくはmelanoidins)が生成する。近年、主にアメリカの研究グループから、AGEs含量の高い食品を多く摂取すると糖尿病が悪化するなど、食品中AGEsの健康被害に関する報告が多くなされており、我が国のAGEs含量の高い伝統食品である味噌や醤油の摂取にも危険性が問われている。味噌や醤油の熟成過程において、糖の分解からグリセルアルデヒド(GLA)生成が生成し、GLAと大豆由来蛋白との反応からGLA由来AGEsが生成することが推測される。そこで前年度は、GLAでAGEs化したウシ血清アルブミン(GLA-BSA)をマウスに免疫して3株のモノクローナル抗体を得た。今年度、これら抗体のうち特に活性の高かった2A5のエピトープ解析を行った。その結果、本抗体はGLA修飾したAc-Lysと反応性を示したが、GLA修飾したAc-ArgやAc-Hisとは反応性を示さないことが酵素標識免疫法(ELISA)で確認され、本抗体のエピトープ構造はLys由来のAGEs構造であると考えられた。次にGLAとLys由来のAGEs構造をさらに特定する目的で、αアミノ基がCBZで保護されたLysを用いてGLA修飾体を作製し、ODSカラムを備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分画を行った。GLAとCBZ-Lysの反応から様々な成分がHPLCで検出され、いくつかの画分は2A5と顕著な反応性を競合ELISAで示した。現在、抗体と反応する画分の構造を解析中である。また、競合ELISA にて2A5は味噌蛋白との反応性を示した。既に平成24年の研究成果より味噌中から液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置を用いて測定が可能となったNe-(carboxymethyl)lysine (CML)に加え、今回新たなAGEsの測定が可能となった。これら実験成果より、味噌中AGEs含量の正確な測定が可能となり、今後、AGEsを含有することによる味噌の風評被害などを低減できる可能性がある。
|