研究概要 |
近年、麻痺性貝毒(PSP)による二枚貝の毒化は広域化の傾向にあり、食料資源の確保の面からも問題となっている。これまで、PSPにより毒化した二枚貝の除毒法の検討が行われてきたが、食品の嗜好性に配慮した除毒加工・調理法の開発には至っていない。そこで、毒化マガキの除毒調理操作がPSPの除毒に与える影響について検討した。 有毒渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseにより毒化したマガキを試料とした。むき身にしたホール状のカキは、炭酸水素ナトリウム溶液に10分または30分浸漬した後に200℃に設定したオーブンで焼成した。磨砕したペースト状カキはpH 7.2に調整し、ゆでるものとオーブンで焼くものに分けて調理した。調理後の試料は公定法に準じてマウス毒性試験に供するとともに、高速液体クロマトフラフィーにて麻痺性貝毒の成分分析を行った。 生ガキのマウス毒性値は23.1 MU/gであった。一方、ホール状焼く試料では10分浸漬で19.3 MU/g、30分浸漬で20.6 MU/gとなり、ペースト状焼く試料でも20MU/gを越え、除毒効果は認められなかった。しかし、ペースト状ゆでる試料では、加熱5分で1/2程度まで毒性値が減少し、加熱30分では規制値(4MU/g)以下となった。生ガキの毒成分はPX1,PX2が全体の約50%を占め、その他GTX1,2,3,4およびdcGTX2,3から構成されていた。ホール状焼く試料は生ガキと同様な毒組成を示した。しかし、ペースト状の試料ではいずれの調理操作においてもdcGTX2,3の割合が増加し、ゆでる操作において高毒性のGTX1,4が減少したことで毒性値が低下したと考えられた。以上の結果より、PSPで毒化したカキは弱アルカリ処理後にゆでる操作を行うと除毒効果が高いことが示唆された。
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