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2013 年度 実施状況報告書

鯉類の消費拡大と食文化イノベーションがもたらす環境負荷低減効果

研究課題

研究課題/領域番号 24650486
研究機関東京工業大学

研究代表者

大柿 久美子  東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教務職員 (00169898)

キーワードホンモロコ / 養殖 / GHG排出量 / 水耕栽培
研究概要

コイ科の小型淡水魚ホンモロコは、休耕田を利用して新たに養殖をはじめやすい。内陸地域において地産地消の魚として消費拡大を図る場合、養殖の環境負荷を検討することが求められる。
養殖のGHG排出量を埼玉県の例をもとに求め、3.62tCO2/t、単位面積当たりでは、1,447g CO2/m2/yearという値を得た。一方、養殖池から直接大気に揮散するGHGについても算出した。養殖池から揮散するGHGはN2Oが主で、埼玉県の例をもとに揮散し得る最大量を見積もった。その結果13,700g CO2/m2/yearとなり、養殖池から揮散するGHGは養殖過程の9.5倍の排出能があることが明らかになった。ホンモロコ養殖における総GHG排出量は、同じ水田において大気へ揮散する分も含めた米生産と比較して約20倍という大きな排出能である事も明らかになった。
したがってホンモロコ養殖の環境負荷を低減するためには、養殖池から揮散するGHG、主としてN2Oを低減することが最も重要で、植物の水耕栽培によって養殖池中に排出される無機塩類を吸収除去する事を提案し、その可能性を検討した。
本研究の例では、平均163mg/m2/dayの窒素が養殖池へ排出されたが、花卉植物サンパチェンスを使った水中の栄養塩類除去実験では423mg/m2/dayの無機態窒素吸収能が明らかにされており、養殖池で同時に水耕栽培することで、水中に溶存する無機態窒素を充分除去できることが示された。この結果は、植物の水耕栽培を同時に行うことは養殖池中に排出される無機塩類を吸収除去でき、単位面積当たりで養殖できる魚の量を増やせる事も示す。
養殖池に植物を水耕栽培し池内に排出される無機塩類をほぼ除去しながら養殖されたホンモロコは、地産地消の環境負荷の小さな養殖魚として消費を拡大し同時に養殖のあり方について社会の関心を向ける意義が認められる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

我が国では海面漁業が盛んで輸送や保存技術が向上したため内陸地域にも行き渡り、かつて内陸地域で盛んに消費されていた鯉などの消費量は年々減少している。地産地消の魚として内陸地域で養殖し易い鯉類等の消費拡大を考える際、養殖の与える環境負荷を計算した上で消費拡大の意義を考えることが必要である。
そこで、消費者に受け入れられ安いと考えられるコイ科の小型魚ホンモロコについて、養殖におけるGHG排出量を算出した。その際養殖池から直接大気中に揮散し得るGHGも求めることができた。さらに、そのGHGの大半を吸収除去できる水耕栽培植物の利用によって、環境負荷の小さな養殖が可能となることを提案した。
この結果によって、養殖業が盛んな我が国において、養殖がかかえる環境負荷をGHGの観点からも見直す必要性が明らかになった。また、魚養殖の環境負荷低減効果について、数値的な評価をもとに検討した例を示すことができたので、グローバルな食料問題のひとつとして今後世界的には拡大の一途をたどると考えられる養殖のあり方について、国際会議を通して発信できるところまで達した。
現在LCA Food Conference 2014 にアクセプトされたので、発表に向けて準備を進めており、おおむね順調に進展しているのではないかと考えられる。

今後の研究の推進方策

本年度は、研究結果を発信し意見交換を行うことに重点を置く。
他の魚養殖の例についてもGHG排出量を計算し、データの蓄積を行なう。-

次年度の研究費の使用計画

コイ科の小型魚ホンモロコの養殖のGHG排出量を算出するため、養殖過程におけるGHG排出量を積み上げ法で算出し、さらに養殖池から大気へ輝散するN2Oを推算した。養殖池から揮散し得るGHGが養殖プロセスの9.5倍と大きな値で、その削減が不可欠であることが明らかとなった。水耕栽培の花卉植物による水中の窒素負荷吸収の実験データを得て、N2O削減の可能性を検討した。水耕栽培による花を食材とすることができれば養殖魚とエディブルフラワーを同時生産する環境負荷の小さな食料生産となる。そこで、実験データにより魚の糞尿や残餌を栄養塩として栽培することが充分可能だということが確認された花卉植物について、成分分析を行って食用に適するか検討する予定であったが、分析に必要な花の量が得られずに未使用額が生じた。
花の成分分析に拘らず、養殖魚のGHG排出量は魚の生産のみでなく養殖池から直接大気中へ揮散するGHGを考慮した評価が重要であること、魚の養殖は水中に排出される無機塩類除去について検討することが必要である事、などを国際的な場で発表する意義は大きいと考えを修正した。
食料の増産が求められる今日、魚の養殖は今後世界各地で盛んになると考えられ、養殖し易いコイ科の淡水魚についてGHG排出量の算出のみでなく、削減方法をも含んだ研究成果を 9th International Conference LCA of Food で発表することとし、アクセプトされた。したがって、そのための準備費用、参加登録費、渡航費に充てたい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] GHG Emissions from an Aquaculture System of Freshwater Fish with Hydroponic Plants2014

    • 著者名/発表者名
      Kumiko Ohgaki, Yoko Oki and Atsushi Inaba
    • 学会等名
      9th International Conference of LCA of Food
    • 発表場所
      San Francisco
    • 年月日
      20141008-20141010
  • [備考] T2R2 東京工業大学リサーチリポジトリ

    • URL

      http://t2r2.star.titech.ac.jp/cgi-bin/researcherinfo.cgi?q_researcher_content_number=CTT100582906

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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