研究実績の概要 |
コイ科の淡水魚は養殖環境の制約が少ないことから、内陸地域における地産地消の食料に適している。特に小型魚のホンモロコは休耕田を小規模改修した養殖池で生産でき、設備や労力の負担が小さい。また単年養殖であることから初心者でも始め易い。 そこで、休耕田を利用したホンモロコ養殖の環境負荷を検討するため、埼玉県水産研究所の養殖データをもとにGHG排出量を算出した。養殖生産のGHG排出量はもとより、水中に排出される魚の排泄物の窒素成分から大気中に放出される亜酸化窒素(N2O)に関しても排出量を見積もった。窒素のうちN2Oになり大気へ放出される割合は、米国で実測された排水処理施設からのN2Oの放出割合を用いた。このN2Oも考慮したホンモロコ生産の単位面積当たりのGHG排出量は約 2,000g-CO2e/m2/yearとなり、米生産の3~4倍と大きな値であることが明らかとなった。 この水中に排出される窒素を植物の水耕栽培で吸収除去できればN2Oの排出を削減できるだけでなく、養殖できるホンモロコの量を増やせる可能性もある。 そこで花卉植物サンパチェンスの水耕栽培による窒素吸収除去効果をワグネルポット内で10%Hoagland液を用いて実験した結果をもとに、一株の窒素除去能をホンモロコ養殖期間を通じて76g/m2と推算した。1000m2の水田の場合446株のサンパチェンスの水耕栽培を行なうことによって、水中に排出される窒素を一掃できる可能性があることが明らかになった。 水産養殖一般において大気へ直接放出されるN2Oは大きな懸念材料である。世界では水産養殖が急速に拡大していることから、食料に関する国際会議で水耕栽培を組み合わせた養殖システムの重要性を発表したいと考え、この研究結果を 9th International Conference LCA of Food, USA(2014)で発表した。
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