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2012 年度 実施状況報告書

栄養の概日リズム調節特性を利用した光栄養療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 24650490
研究機関九州大学

研究代表者

古瀬 充宏  九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30209176)

研究分担者 安尾 しのぶ  九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30574719)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード概日時計 / 栄養 / 時計遺伝子 / 生活リズム
研究概要

近年、夜間連続照明や交替制勤務などによる概日時計の乱れとそれに起因する疾病リスクの上昇が問題視されている。本研究では概日時計を制御できる機能性アミノ酸を同定するため、マウスの活動リズムや時計遺伝子発現を指標としてスクリーニングを行った。
恒暗条件において20種類のアミノ酸をそれぞれ経口投与し、回転輪活動リズムの位相変化を測定したところ、位相を有意に後退させるアミノ酸が2種類同定された。また12時間明期12時間暗期の明期において各アミノ酸を投与し、1.5時間後における肝臓の時計遺伝子発現を解析したところ、12種類のアミノ酸が様々な時計遺伝子の発現を増減させた。アミノ酸により発現が調節される時計遺伝子の種類や誘導・抑制の方向が異なっていたが、構造や代謝経路が似たアミノ酸では類似の反応性を示す傾向が見られた。これらの結果は、アミノ酸栄養により中枢や末梢の概日時計を制御できることを示唆する。また、アミノ酸の投与時刻により概日時計やホルモン分泌の調節作用が異なることが解明された。これらの結果から、アミノ酸の種類のみでなく摂取時刻も生体リズム調節に重要であることが示唆された。
本研究では今後、スクリーニングされたアミノ酸が概日時計の攪乱に起因する疾病に効果があるかを検討する予定である。そのための動物モデルとして、頻繁に光条件を前進させて作出した慢性的時差ぼけモデルマウスにおける概日時計の特性を解析したところ、肝臓における時計遺伝子や癌関連遺伝子の乱れが確認された。また、概日時計の乱れを伴うと知られる定型うつ病や冬季うつ病のモデル動物についても解析を行い、アミノ酸の機能性を検証する基盤が築かれた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定していた実験は全て終了し、順調に結果が出ている。活動リズムや末梢概日時計の時計遺伝子発現を調節できるアミノ酸がスクリーニングされ、それぞれの機能性を深く追求するための基礎が出来ている。さらに、次年度で効果を確認するための慢性的時差ぼけモデルマウスやうつ病モデル動物の解析も終わっており、目的の病態を示すことを確認しているため、次年度の解析がスムーズに進むと期待できる。

今後の研究の推進方策

今年度スクリーニングされたアミノ酸を用いて、概日時計に関連した2つの疾病モデルマウス(慢性的時差ぼけマウスおよび冬季うつ病マウス)に対する改善効果を検討する。
慢性的時差ぼけマウスは、新規光条件への反応の遅さと肝臓における時計遺伝子および癌関連遺伝子(c-Myc, p53)の発現異常を特徴とする。まずアミノ酸栄養の効果検証のための最適条件を探るため、慢性的時差ぼけ処理期間において経時的に肝臓の上記遺伝子発現を解析する。同定された最適条件において、活動リズムを調節するアミノ酸や肝臓の時計を調節するアミノ酸をそれぞれ投与し、上記遺伝子発現の異常を改善させるものを同定する。また、アミノ酸の概日時計調節メカニズムについて、アミノ酸投与後の脳内アミノ酸含量の変化や関連遺伝子発現を解析することにより追求する。
冬季うつ病は概日時計の乱れが一因と知られているため、アミノ酸栄養により改善できる可能性が考えられる。そこで我々が既に確立しつつある冬季うつ病様マウスにアミノ酸投与を行い、うつ様行動やそれに関連する脳内セロトニン神経系に見られる効果を解析する。また治療に最適な投与時刻や光条件との相互作用についても解析する。

次年度の研究費の使用計画

今年度は15,862円の残金が生じているが、次年度に代表者の物品費(遺伝子発現解析試薬)として使用予定である。次年度のその他の使用内訳に変更はない。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Oral administration of L-serine increases L- and D-serine levels in the plasma and brain of fasted rats2012

    • 著者名/発表者名
      Tomonaga S, Yamasaki I, Nagasawa M, Ogino Y, Uotsu N, Teramoto S, Furuse M
    • 雑誌名

      Letters in Drug Design & Discovery

      巻: 9 ページ: 663-667

    • DOI

      10.2174/157018012801319436

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Hypothesis with abnormal amino acid metabolism in depression and stress vulnerability in Wistar Kyoto rats2012

    • 著者名/発表者名
      Nagasawa M, Ogino Y, Kurata K, Otsuka T, Yoshida J, Tomonaga S, Furuse M
    • 雑誌名

      Amino Acids

      巻: 43 ページ: 2010-2111

    • DOI

      10.1007/s00726-012-1294-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Photoperiod regulates corticosterone rhythms by altered adrenal sensitivity via melatoninindependent mechanisms in Fischer 344 rats and C57BL/6J mice2012

    • 著者名/発表者名
      Otsuka T, Goto M, Kawai M, Togo Y, Katoh K, Furuse M, Yasuo S
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 7 ページ: e39090

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0039090

    • 査読あり
  • [学会発表] モデル動物を用いた冬季うつ病の病態解析と治療に向けた試み2013

    • 著者名/発表者名
      安尾しのぶ
    • 学会等名
      第86回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡)
    • 年月日
      20130321-20130323
    • 招待講演
  • [学会発表] Antidepressant-like effects of acute and chronic L-serine treatment in Wistar and Kyoto rats2012

    • 著者名/発表者名
      Nagasawa M, Ohtsuka T, Togo Y, Yamanaga M, Yoshida J, Yamasaki I, Uotsu N, Teramoto S, Yasuo S, Furuse M
    • 学会等名
      International Conference and Exhibition on Nutraceuticals and Functional Foods
    • 発表場所
      Hawaii, USA
    • 年月日
      20121201-20121206
  • [学会発表] 概日時計に影響を及ぼすアミノ酸の探索2012

    • 著者名/発表者名
      岩本綾香、河井美里、松尾陽香、古瀬充宏、安尾 しのぶ
    • 学会等名
      日本アミノ酸学会第6回学術大会
    • 発表場所
      千葉大学園芸学部(千葉)
    • 年月日
      20120928-20120929
  • [学会発表] L-オルニチンの投与時刻依存的なホルモン分泌リズム制御2012

    • 著者名/発表者名
      松尾陽香、岩本綾香、大塚剛司、秋月さおり、青木 麻実、古瀬充宏、安尾しのぶ
    • 学会等名
      日本アミノ酸学会第6回学術大会
    • 発表場所
      千葉大学園芸学部(千葉)
    • 年月日
      20120928-20120929
  • [学会発表] L-セリンの単回および長期給与はWistar Kyoto ラットならびにWistar ラットにおいて抗うつ様効果を誘 導する2012

    • 著者名/発表者名
      長澤麻央、大塚剛司、都合勇希、山長聖和、吉田惇紀、山崎いづみ、魚津伸夫、寺本祐之、安尾しのぶ、古瀬充宏
    • 学会等名
      日本アミノ酸学会第6回学術大会
    • 発表場所
      千葉大学園芸学部(千葉)
    • 年月日
      20120928-20120929
  • [学会発表] 季節の生体リズムと食2012

    • 著者名/発表者名
      安尾しのぶ
    • 学会等名
      睡眠学会第37回学術集会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜)
    • 年月日
      20120628-20120630
    • 招待講演
  • [備考] 九州大学大学院農学研究院 代謝・行動制御学研究分野

    • URL

      http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/lrmb/

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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