研究課題
近年、24時間営業や交替制勤務などの増加により、人々を取り巻く明暗サイクルが不規則化している。不規則な照明条件は内因性の概日時計を撹乱させ、睡眠障害やがんなどの発症リスクを上昇させる。本研究では、概日時計を調節できるアミノ酸栄養を同定するため、マウスの活動リズムや時計遺伝子発現を指標としてスクリーニングを行った。20種類のアミノ酸をそれぞれCBA/Nマウスに経口投与し、各種指標を解析した結果、回転輪活動リズムの位相を変化させるアミノ酸が2種類、同活動リズムの光リセットを増強させるアミノ酸が1種類、また肝臓の時計遺伝子発現を変化させるアミノ酸が12種類同定された。また、アミノ酸の投与時刻によりホルモン分泌の調節作用が異なることが解明された。これらの結果から、適切なアミノ酸を適切な時刻に摂取することで、概日時計の乱れに起因する疾病を改善予防できる可能性が考えられる。同定したアミノ酸の機能性を評価するため、概日時計の乱れを伴うと知られる冬季うつ病モデルマウスにおいて、光リセット増強アミノ酸を投与後に高照度光照射を行ったところ、高照度光による抗うつ様効果が有意に強められた。また、縫線核の小領域におけるセロトニン免疫陽性細胞数や神経活性が光により増加すること、その増加が同アミノ酸の投与により部分的に強められることを見出した。次に、光条件を人為的に乱した慢性的時差ぼけモデルマウスを作製し、肝臓における時計遺伝子や細胞周期関連遺伝子、またホルモン受容体遺伝子の発現異常を見出した。同マウスにおいて、肝臓の時計遺伝子発現の調節機能をもつ幾つかのアミノ酸を投与すると、上記遺伝子発現の異常が部分的に改善された。本研究により、概日時計の乱れに起因する疾病をアミノ酸栄養により予防改善する道が開かれた。
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Psychoneuroendocrinology
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http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/lrmb/