昨年度の成果より、メトキシ化度の高いペクチンほど大腸内でメタノールを遊離しやすく、生体内へのメタノール供給源となっていることが判明した。このメタノールが代謝アシドーシスを引き起こすギ酸に代謝されるため、血中ギ酸濃度にどの程度寄与しているかを調べることを目的とした。 げっ歯動物ではギ酸代謝速度が速いため、ヒトギ酸代謝を模倣したラットをメトトレキサート(MTX)と葉酸欠乏食投与によって作製した。このラットに引き続き葉酸欠乏コントロール(MTX-C)食、5%ペクチン(メトキシ化度55;MTX-P)食を9日間与えた。また、摂食量からペクチン摂取量を求め、ペクチンからすべてのメタノールが遊離した場合と等量のメタノールを飲水投与したラット(MTX-M)も用意した。MTXおよび葉酸欠乏食投与ラットの動脈葉酸濃度は、非投与ラットの25%まで低下した。葉酸欠乏食のみ投与したラットでも同様の低下を示したため、葉酸欠乏食のみで生体内の葉酸レベルを低下させ、ヒトギ酸代謝を模倣できると考えられる。一部のMTX投与ラットで試験最終3日間の摂食量が著しく減少し、体重低下を引き起こしたことから、MTXそのものが本結果に影響を与えた可能性も考えられる。MTX非投与の葉酸欠乏食ラットで摂食量の低下はみられなかった。門脈および動脈血漿メタノール濃度は、MTX-C群に比べ、有意にMTX-P群とMTX-M群で高値を示した。試験最終3日間のペクチン摂取量と動脈メタノール濃度の間には高い正の相関が認められ、ペクチン摂取量が増加すれば、生体内に供給されるメタノールが多くなることが示された。一方、大腸でペクチンから遊離したメタノールが門脈に速やかに吸収される結果も得られた。動脈ギ酸濃度は、統計的有意差はなかったが、MTX-PおよびMTX-M群で高くなる傾向を示し、ペクチン由来のメタノールがギ酸に代謝されることが示された。
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