研究課題/領域番号 |
24650493
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
石井 剛志 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (50448700)
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研究分担者 |
中山 勉 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (50150199)
望月 和樹 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (80423838)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 難吸収性ポリフェノール / カテキン類 / テアフラビン類 / 渋味 / 膜透過性 / リン脂質膜 / タンパク質 / 相互作用 |
研究概要 |
茶に含まれるカテキン類やテアフラビン類は、腸管から体内に吸収され難い「難吸収性ポリフェノール」であり、特徴として生体成分に対する強い結合性と渋味を示す。難吸収性ポリフェノールは、生体内に取り込まれ難いにも関わらず動物やヒトに対する疾病予防効果が報告されているが、その作用機序は解明されていない。本研究では、難吸収性ポリフェノールが消化管内で渋味物質として生体成分に作用することで、体内に取り込まれることなく生理作用を惹起する可能性を検証するために、その分子受容機構を明らかにすることを目的とした。 カテキン類やテアフラビン類などの茶ポリフェノールを試料とし、ポリフェノールの吸収性と渋味の関係を評価した。人工リン脂質膜透過法を用いた吸収性評価および味認識装置を用いた渋味評価の結果、膜透過性が低い茶ポリフェノールほど渋味が強いことが明らかになった。 茶ポリフェノールの消化管膜上の分子挙動を解析するとともに標的分子の探索を試みた。茶ポリフェノールを人工リン脂質膜およびヒト培養細胞に処理し、細胞膜への結合量を評価した結果、膜透過性が低く渋味が強い茶ポリフェノールほど膜表面に強く結合すること、物質の構造(例えばガロイル基の有無)の違いにより膜上での挙動が異なることを確認した。渋味の強いポリフェノールは膜タンパク質と強く結合することが確認されたが、タンパク質の同定には至らなかった。 緑茶や紅茶の食後高血糖抑制効果に着目し、茶ポリフェノールの消化管粘膜への結合が生体応答に及ぼす影響を解析した。茶ポリフェノールを単回投与したSDラットを用いて小腸粘膜上の二糖類水解酵素の活性や発現に及ぼす影響を評価した結果、カテキン類やテアフラビン類が小腸粘膜上に結合していても、二糖類水解酵素の活性や発現に与える影響は小さいことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目標のひとつであるポリフェノールの吸収性と渋味の関連を明らかにした。また、ポリフェノールの消化管粘膜上の分子挙動を茶ポリフェノールとモデル生体膜を用いた評価系により明らかにした。これらのデータの一部は学会や原著論文にて発表しており、さらに原著論文の作成を進めている。 目標のひとつである膜上の標的分子の探索は完了していない。これは、昨年度、所属研究機関に導入された質量分析装置(LC-MS/MS)の利用準備が遅れ、タンパク質同定が進まなかったためである。膜タンパク質への結合は確認できており、後は同定を残すのみである。 目標のひとつである難吸収性ポリフェノールの生体応答に関する知見を得た。茶ポリフェノールが小腸粘膜上に作用することで生体応答を示し、二糖類の吸収に直接的に影響する酵素の活性を阻害することなく食後高血糖阻害作用を示す可能性を見出したことから、別の受容機構が存在すると予想し、解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
プロシアニジン類やタンニン酸などの茶ポリフェノール以外のポリフェノールについても吸収性と渋味との関連性を明らかにするとともに、吸収性が低く渋味を呈するポリフェノールに共通の標的分子を探索する。 ポリフェノールの結合によるポリフェノール自身や脂質膜の変化を解析し、得られた情報から結合モデルを作製し、難吸収性ポリフェノールの膜上における分子挙動を明らかにする。 渋味を持つ難吸収性ポリフェノールに共通して結合する分子標的や結合挙動が明らかになった場合には、等温滴定型カロリメトリにより結合定数や結合様式(物理的相互作用)を解析するとともに電気泳動法やLC-MS/MSにより結合部位や結合様式(共有結合)を解析する。 上記の結果を踏まえ、食後高血糖の抑制作用や血流改善作用に着目し、これらの作用を惹起する難吸収性ポリフェノールの受容機構の解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度、全学共通機器として導入された質量分析装置(LC-MS/MS)の利用準備が遅れたために(予定では1月に利用可能)膜上のタンパク質同定が遅れている。LC-MS/MSには専用のカラムや利用料(高純度窒素ガスや共通試薬を使用する)が必要なため、繰り越した研究費は主にその経費とする。また、得られた成果を発表する際には旅費として使用する予定である。
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