研究課題/領域番号 |
24650493
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
石井 剛志 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (50448700)
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研究分担者 |
中山 勉 日本獣医生命科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50150199)
望月 和樹 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (80423838)
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キーワード | 難吸収性ポリフェノール / カテキン類 / テアフラビン類 / 渋味 / 膜透過性 / リン脂質膜 / ポリフェノール会合体 / 相互作用 |
研究概要 |
茶に含まれるカテキン類やテアフラビン類は、腸管から生体内に吸収され難い「難吸収性ポリフェノール」であり、特徴として生体成分に対する強い結合性と渋味を示す。難吸収性ポリフェノールは、生体内に取り込まれ難いにもかかわらず動物やヒトに対する疾病予防効果が報告されているが、その作用機序は解明されていない。本研究では、難吸収性ポリフェノールが消化管内で体内に取り込まれることなく生理作用を惹起する可能性を検証するために、その分子重要機構を明らかにすることを目的とした。 茶ポリフェノールを試料とし、膜透過性が低く渋味が強くなる要因を探索し、ポリフェノールの分子会合性を要因の一つとして見出した。この簡便な評価系としてネイティブ電気泳動法を利用した評価法を構築し解析を行った結果、分子会合性の高いポリフェノールは膜透過性が低く渋味が強いことが明らかになった。この現象については、その一部を学会発表するとともに、2014年度の掲載に向けて原著論文として投稿した。 茶ポリフェノールの消化管膜上での挙動を明らかにするために、会合性低く渋味が高いポリフェノール(非ガレート型カテキン・テアフラビン)と会合性高く渋味が強いポリフェノール(ガレート型カテキン・テアフラビン)の吸収性をヒト大腸がん細胞やラット消化管を用いた透過試験により評価した。その結果、人工リン脂質膜の結果と同様に、会合性が高く渋味の強いポリフェノールは、膜を透過し難く膜表面に強く結合することが明らかになった。膜タンパク質に結合したポリフェノールは、安定に抽出することが難しく、その同定には至らなかった。 難吸収性ポリフェノールの生体応等についてマウスを用いた動物実験により評価した。その結果、ガレート型テアフラビンは、吸収されることなくエネルギー代謝促進作用を発揮する可能性を示した。この結果の一部は、学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目標のひとつであるポリフェノールの吸収性と渋味に影響を与える因子としてポリフェノールの分子会合性を見出し、その簡易な評価法を構築した。この結果の一部は、学会で発表し、さらには2014年度の掲載に向けて原著論文として投稿している。 目標のひとつである膜上の標的分子の探索は前年度に引き続き完了していない。これは、研究代表者の所属する研究室内の研究分担者の異動に伴い、研究室での業務が一時的に増加したことや、取り扱いの難しい膜タンパク質の効率的な抽出法が確立できなかったことによる。 目標のひとつである難吸収性ポリフェノールの生体応答に関する新たな知見を得ることに成功した。この結果の一部は、学会で発表し、さらには2014年度の掲載に向けて原著論文として投稿している。
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今後の研究の推進方策 |
さまざまな理由により、研究がやや遅れたことから、終了年度を2013年度から2014年度に延長した。 プロシアニジン類やタンニン酸などの茶ポリフェノール以外のポリフェノールに関しても会合性と吸収性や渋味との関連性を明らかにするとともに、難吸収性ポリフェノールに共通の標的分子の探索を目指す。そのためには、ポリフェノールの結合した膜タンパク質の効率的な抽出が重要であるため、抽出法の確立とそれを利用した標的分子の同定を目指す。 上記の結果を踏まえ、これまでに明らかになっている生体応答(食後高血糖の改善作用、血流改善作用およびエネルギー代謝更新作用など)に着目し、これらの作用を惹起する難吸収性ポリフェノールの受容機構の解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
所属研究室の研究者が他の研究機関へ移動したことにともない、指導学生の配置転換を含め研究室運営上の様々な事務対応を行ったため、予定していた実験に着手できず、研究に遅延が生じたことにより、期間延長したため。 当初の予定通り、研究進展に必要な消耗品(試薬・プラスチック製品)の購入や研究成果の発表にかかわる旅費・論文作成費(別刷り購入を含む)として使用する予定である。
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