研究課題/領域番号 |
24650494
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
岡田 悦政 愛知県立大学, 看護学部, 准教授 (60224036)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アルツハイマー型認知症 / アミロイドβ / コマツナ種子 / インスリン / インスリンレセプター / グルコース / 神経細胞 / 細胞死 |
研究概要 |
【研究目的】 本研究の目的は、食由来成分によるアルツハイマー型認知症(AD)の抑制にある。ADの病因とされるアミロイドβ(Aβ)とインスリン(Ins)には共通点がある。両者はアミロイド形成を成す共通のペプチド配列があり、また、Insレセプター(IR)に対し競合して結合し、Ins分解酵素によってともに分解される。これらからAβによる細胞死機構は、Aβによる糖の取込阻害が関係している可能性がある。 これらの推論をもとに、すでにコマツナ種子抽出成分(KSE)がAβによる細胞死抑制に効果があることを確認しているため、KSEによるAβ細胞死抑制機構を通してAβ細胞死の1つの機構を明らかにすることは、AD抑制の可能性に繋がる重要な意義のある研究であり、本研究の目的である。 【研究結果】 【1.KSEによるAβへの修飾反応は起こるのか】(1)吸収スペクトルからの検討:試験管内でKSEとAβを混合し、時間経過吸収スペクトルの変化を追った。結果は、KSEによるAβへの反応は、至適条件下において検出された。(2)分子量からの検討:電気泳動測定。結果は、KSEによるAβへの修飾反応等により、Aβバンドの移動度の変更、あるいは消去が見られた。(3)AβがGlucose(Glu)によって修飾されるか否かの確認。Glu+Aβのスペクトル結果は、変化が見られなかった。(4)Aβ+Insはスペクトル変化がなく、分子量測定でも変化を確認しなかった。 【2.KSEによって修飾されたAβはIRへ結合するのか】培養細胞を用いたインスリン取込量からの検討。(1)KSEとAβの反応時間を置く場合。結果は、取込促進が見られた。(2)反応時間を置かず、同時に加えた場合:取込促進効果は見られなかった。(3)AβはGluにより修飾されず、取込促進は見られた。(4)AβはInsにより修飾されず、Ins濃度のため測定不能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究の達成度は研究目的をほぼ達成できたものと考える。100%と記述できない点は、実験系においてインスリンレセプターキットの購入が不可能であったため、実際の細胞を用いた実験に切り替えた点のみである。しかしながら、この実験により次年度の予備実験としての計画も実施できたため、特に問題なく、本年度の目的は達成できたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
【研究実施目的】コマツナ種子抽出物(KSE)とアミロイドβ(Aβ)投与時の細胞におけるグルコース(Glu)消費量及び取込量と細胞死の関係を検討する。(1)KSEとAβの修飾反応時間を置く、(2)反応時間なし、(3)Aβ+Glu、(4)Aβ+インスリン(Ins) 【研究実施計画】 【3.KSE修飾AβはGlu消費量に影響するのか:細胞における検討】(1)KSEとAβの反応時間を置く場合:1.KSEによるAβへの修飾反応は起こるのかで決定された条件下で細胞へ投与する。一定期間の培養を行い、Glu消費量を測定する。(2)反応時間を置かず、同時に加える場合:KSEおよびAβを同時に細胞に投与し、Glu消費量を測定する。(3)AβとGluを同時に加えGlu消費量を確認する。(4)AβとInsを同時に加えた場合のGlu消費量を確認する。 【4.KSEによって修飾されたAβはGlu取込に影響するのか:細胞における検討】3.の(1)~(4)の条件によるGlu取込量を測定する。 【5.KSEによって修飾されたAβは、細胞死に影響するのか】3.の(1)~(4)の条件による結果を参考に細胞培養実験後、生細胞数を測定する。また、Gluの消費量及び取込量と細胞数の関連を検討する。 以上の研究結果をもとに、Aβによりどのような機構で細胞死が遂行されるのかについて仮説の検証を行う。すなわち、Glu取込時にInsが結合すべきIRにAβが結合し、糖の取込が阻害されるのか。また、取り込まれない余剰の糖が、Aβの表面に修飾し、糖化状態となっているのか。さらに、AβとInsは結合することが可能なのか。以上の研究結果から、これらのどの段階にどのようにKSEが関わったのか。KSEによる神経細胞死抑制機構を通して、Aβによる細胞死の機構を推察し、アルツハイマー型認知症等幾つかの疾病の細胞死機構を推察することを目的とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、細胞実験を主に行い、また、その結果の検索のためのELISA kitを用いた実験を実施する。また、平成24年度研究費において未使用金が生じたため、平成25年度研究費と併せ、研究備品としてマイクロプレートを遠心できる遠心機の購入を行い、その他細胞培養関係試薬や、ELISA kit関係の消耗品を購入する計画である。
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