研究課題/領域番号 |
24650497
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
重藤 麻美 福岡女子大学, 文理学部, 研究員 (20458110)
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研究期間 (年度) |
2013-02-01 – 2017-03-31
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キーワード | 味蕾 |
研究実績の概要 |
味蕾は、構成する細胞の形態とその配置によって、周辺の重層扁平上皮と明瞭に区別され、それらの細胞は10~14日ほどで入れ替わっている。それにも関わらず、その形態形成・維持の仕組みはほとんどわかっていない。 そこで、本研究では、味蕾の形態形成・維持に関与する古典的カドヘリンを同定し、味蕾におけるその機能を解析する。平成25年度に行ったレーザーマイクロダイセクション法とRT-PCR法を用いた発現解析の結果、味蕾を構成する細胞と、その周辺の上皮細胞の間に、現在までに報告されている古典的カドヘリンのうち10種類において、増幅量に差があることが分かった。この結果をふまえ、平成26年度は、これらの古典的カドヘリンの局在を検討するために、まずは、抗体入手が可能であった3種類の古典的カドヘリンについて、免疫組織化学法を用いた解析を行った。その結果、少なくとも2種類の古典的カドヘリンが、味蕾を構成する細胞に局在していることが示された。そのうち、1種類について詳細な検討を進めることとし、味蕾細胞のマーカー抗体との二重染色も行ったが、明瞭な結論を導くことができず、現在、他のマーカーの利用、および免疫電顕法の利用も含めて検討中である。 古典的カドヘリンのうち、上皮細胞で発現しているEカドヘリンは、亜鉛要求性転写因子によって転写制御されていることが報告されており、近年、その増加が問題となっている味覚異常の主な原因の一つに、亜鉛欠乏があげられている。味蕾細胞において、いくつかの古典的カドヘリンが発現していることが示唆されたことから、本研究の申請時に仮定した、亜鉛欠乏による味覚異常と、味蕾で機能する古典的カドヘリンとの関係についても、研究を進めることとし、亜鉛欠乏実験を行っている他の研究者より、その研究には必要のないマウスの舌を譲り受け、免疫組織化学法を用いた予備的な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25年度研究実施計画のうち「1.味蕾を構成する細胞で発現する古典的カドヘリンの同定」については、RNAレベルでの発現解析は平成25年度内に順調に終了したが、平成26年度に取りかかったタンパク質レベルでの解析に、想定以上の時間がかかっており、明瞭な結論を導けないでいる。その原因として、免疫組織化学法は、使用する抗体によって、条件の検討が必要で、今回用いている古典的カドヘリン抗体を用いた、味蕾における先行研究がなく、実験条件の検討に半年以上の時間がかかってしまったことがあげられる。また、味蕾細胞のマーカー抗体との二重染色の結果は、明瞭に判断できるものではなく、別の方法を用いた検討を行っているところで、達成度は遅れていると言わざるを得ない。 また、26年度研究実施計画のうち、「1.コンディショナル遺伝子改変法を用いたノックアウトマウスの作製」については、上述した味蕾を構成する細胞で発現する古典的カドヘリンを決定した後の研究のため、平成27年度中に実施できるよう研究を進めていきたいと考えている。「2.亜鉛欠乏マウスにおける古典的カドヘリンの発現解析」は、亜鉛欠乏マウスからの舌の調製、および、免疫組織化学法による予備実験を終えている。さらなるサンプルの調製・実験を行う必要があり、達成度としては、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度までの申請者の研究により、味蕾を構成する細胞に局在していることが示された古典的カドヘリンのうち、1種類にについて詳細な検討を進めている。しかし、味蕾細胞のマーカー抗体との二重染色では、明瞭な結論を導くことができなかった。平成27年度は、他のマーカー抗体の利用、および免疫電顕法の利用も含め、この課題について検討中である。免疫電顕については、予備的なサンプルは調製済みである。「コンディショナル遺伝子改変法を用いたノックアウトマウスの作製」は、味蕾で機能している可能性のある古典的カドヘリンを決定した後に、生体内での働きを証明するために計画している研究課題であるが、味蕾で機能している可能性のある古典的カドヘリンの決定に時間がかかったために着手できていない。平成27年度は、できるだけ早期に着手したいと考えている。「亜鉛欠乏マウスにおける古典的カドヘリンの発現解析」については、予備的な実験を終えており、平成27年度は、さらなるサンプルの調製をし、研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な要因としては、平成26年度実施計画のうち、「コンディショナル遺伝子改変法を用いたノックアウトマウスの作製」を実施するに至っておらず、これらの研究のために計上した研究経費を使用していないことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に、これらの研究に着手できるよう、研究を進めていく。研究計画と比較して、実施は遅れているが、研究結果はおおむね仮説に近いものが得られていると考えており、大幅な研究計画の変更は必要ないと考えている。
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