研究課題/領域番号 |
24650499
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研究機関 | 尚絅学院大学 |
研究代表者 |
星 清子 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 准教授 (30564968)
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キーワード | 栄養学 / 成長期 / カルシウム / 乳たんぱく質 / 骨 / 肥満 / 脂質代謝 / 生活習慣病 |
研究概要 |
実験動物として3週齢のSD系雄性ラット28匹を2水準の飼料中のCa含量(0.5%または0.1%)および2種類のたんぱく質(カゼインまたはホエイ)を要因とする計4群に分けた。0.5%Ca食はAIN-93Gに準じた標準食で、0.1%Ca食は低Ca食である。そして3週齢から10週齢を成長期として脂質含量7%の標準エネルギー食を、10週齢以降を成獣期として脂質含量20%の高エネルギー食を与えた。20週齢時に麻酔下で開腹して採血後、おもな臓器、脂肪組織、大腿骨等を摘出して重量を測定した。 8週齢時の低Ca食群の血中Ca濃度が標準Ca食群よりも低くかったことから、本研究の低Ca食の条件は成長期のCa要求量を満たしていないと確認された。さらに、20週齢(成獣)のラットの血中Ca濃度には差がなかったが、低Ca食群ラットの大腿骨重量が著しく軽かったことからも本実験の低Ca食はCa不足の状態であったと確認された。このような条件下で離乳直後からのCa不足と乳たんぱく質の違いが脂質代謝にどのように影響するのかを検討した。 今年度の実験では標準Ca食群ラットの体重が低Ca食群に比べて重く、脂肪組織重量も重かった。これらの結果は、標準Ca食群ラットの摂食量が低Ca食群に比べて有意に多かったためと考えられた。一方、血中脂質(TG)濃度には、Caの摂取量および摂取たんぱく質の違いによる影響がなかったが、昨年度の予備試験と同様に低Ca食群のラットの肝臓重量の増大が観察された。 本年度の実験において、Ca摂取不足による影響として、骨重量の低減と肝臓重量の増大だけが確認されただけであった。体脂肪の蓄積や肥満の発症は、過剰なエネルギー摂取量の影響が大きい。脂質代謝や体脂肪の蓄積におよぼすCa摂取量や摂取たんぱく質による影響を検討するために、比較するラットの摂取エネルギーを制御した条件での再検討が必要と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
25年度中に動物飼育実験を終了させる計画であったが、前年度の飼育ケージ作成の遅延により飼育実験の開始が遅れた。さらに、実施した飼育実験の給餌制御が甘く、実験群間に摂取量の差が生じてしまったため、体重増加や体脂肪蓄積、脂質代謝におよぼす摂取エネルギー量の影響が大きく、Ca摂取量および摂取たんぱく質の影響について明確にすることができなかった。そこで、Pair-feed給餌法を用いるなど実験条件を再検討して、摂食量のコントロールを厳重にした追試験が必要と考える。従って、26年度は飼育条件の見直しと結果の再現性を確認する目的で、再度、動物飼育を実施する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
①24年度に実施した予備実験の結果と25年度に実施した実験の結果の差異について詳細に検討し、今年度の実験条件を決定する。 ②摂食量の制御方法の検討:25年度の実験結果において、低Ca食群のラットの摂取量が少なくなった。そこで、摂取量の少ない群を基準としたPair-Feed給餌法の導入を検討する。 ③厳密な給餌管理のもとに、昨年同様に標準量と不足の2水準のCa含量および2種類の乳たんぱく質の食餌で追試験を実施する。飼育期間はこれまでと同様に離乳直後から20週齢までとする。 ④体脂肪の蓄積量および血中脂質の動態を中心にCa摂取量の影響について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の飼育実験経過により、次年度に再度、飼育実験を追試する必要性がでてきたため、計画していた画像解析装置の購入を見合わせた。次年度の追試の進捗を検討しながら画像解析装置の購入を検討することとする。 ①実験動物、実験飼料の購入費用および動物実験室内消耗品の購入費用。②動物飼育作業補助の人件費・謝金:本研究の実験担当者は単独であり、動物飼育期間が長期にわたるため飼育作業の補助を依頼する。③分析用試薬および器具代。④一部試料の分析を外部に依頼するための費用。
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