研究課題/領域番号 |
24650499
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研究機関 | 尚絅学院大学 |
研究代表者 |
星 清子 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 教授 (30564968)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 栄養学 / 成長期 / カルシウム / 乳たんぱく質 / 骨 / 肥満 / 脂質代謝 / 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
これまで、成長期からのCa摂取不足が成長後の脂質代謝や体脂肪蓄積に及ぼす影響について検討した。その結果、Ca摂取不足によって骨重量の低減、肝臓への脂質蓄積による肝臓重量の増加が確認できた。しかし、体脂肪の蓄積については、低Ca食群のラットの食餌摂取量が減少したため、摂取エネルギーによる影響が大きかった。そこで、平成26年では実験条件の再検討を行い、低Ca食群のラットの摂取量を基準としたpair-feed給餌法を用いた飼育条件で、再検討を実施した。さらに、国民健康栄養調査の結果から、現在の日本人の栄養問題をモデル化した飼料組成で2つの実験を実施した。 実験1では、離乳直後の3週齢ラットを2水準の飼料中Ca含量(0.5%または0.1%)および2種類のたんぱく質(カゼインまたはホエイ)を要因とする計4群に分けた。0.5%Ca食はAIN-93Gに準じた標準食で、0.1%Ca食は低Ca食である。さらに、現在の日本人の栄養状況から、3週齢から解剖時の20週齢まで脂質エネルギー比30%の高脂肪食とした。その結果、低Ca食で除脂肪体重と骨重量が低く、総体脂肪重量はCa摂取量の影響はなかった。これまでと同様に、低Ca食群のラットは、標準Ca食に比べて、血中遊離脂肪酸濃度が高く、肝臓重量が有意に増大した。さらに、ホエイの摂取によってHDL-コレステロールの上昇も確認された。 実験2では、学童期は学校給食における牛乳摂取によりCa摂取量が比較的充足されているが、15歳以上になるとCa摂取量が大幅に低下している現状をモデル化し、成長期には標準Caで飼育し、成長後の10週齢から低Ca食に切り替え、脂質代謝に及ぼす影響を検討した。その結果、低Ca食群のラットにおいて、内臓脂肪重量、肝臓重量および空腹時の血中TG濃度の上昇、HDLコレステロール濃度の低下等、脂質代謝へのネガティブな影響が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度に実験で使用するラットケージを特別注文にて作製して、実験を開始する予定であったが、ケージの設計、試作、製作に予定外の時間を要し、飼育実験の開始が大幅に遅延した。さらに平成25年度の飼育実験中に飼育室内空調機の故障と明暗自動切り替え装置の故障が相次ぎ、飼育実験のやり直しが必要となった。 また、これまでの実験結果から、脂質代謝や体脂肪蓄積量に及ぼす影響が、Ca摂取量の影響というよりも食餌摂取量の差異の影響が大きいと判断されたので、pair-feed法の導入等、食事摂取量の厳密な制御を試み、当初の実験計画の再検討が必要になった。 動物実験施設の飼育環境を整備して、平成26年度に実施した動物飼育が12月末に終了したが、現在、予定の測定項目に未終了の部分が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に実施した実験の未終了の測定項目を完了させ、実験結果をまとめる。 すなわち、平成26年度の実験において、Caの摂取不足により、空腹時の血中TGと遊離脂肪酸濃度の上昇、HDL-コレステロール濃度の低下および肝臓重量の増大を確認した。次年度は、肝臓脂質量の測定、これらの脂質代謝における現象をさらに詳細に検討するために、脂質代謝やインスリン抵抗性の惹起に関係するアディポネクチンやTNF-αなどのアディぽサイトカインの分析と解析を行い、一連の実験結果をまとめる。 本研究テーマの実験において、Caの摂取不足が動物の摂食量を低減(食欲の減退)させることが明らかになった。今後、脂質代謝におよぼすCaの生理学的作用だけではなく、動物の摂食行動とエネルギー代謝に及ぼす影響について明らかにするための検証が必要と考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成24年度に実験で使用するラットケージを特別注文にて作製して、実験を開始する予定であったが、ケージの設計、試作、製作に予定外の時間を要し、飼育実験の開始が大幅に遅延した。さらに平成25年度の飼育実験中に飼育室内空調機の故障による設備交換工事や明暗自動切り替え装置の故障が相次ぎ、実験のやり直しも必要になり、計画進行が遅れた。平成26年度に実施した動物飼育実験の終了(動物の解剖)が12月末であったため、現在、予定の測定項目に未終了の部分が残っているために未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでに、Caの摂取不足により、空腹時の血中TGと遊離脂肪酸濃度の上昇、HDL-コレステロール濃度の低下および肝臓重量の増大を確認した。これらの減少をさらに詳細に検討するために、肝臓脂質含量の測定、脂質代謝やインスリン抵抗性の惹起に関係するアディポネクチンやTNF-αなどのアディポサイトカインの分析と解析を次年度に行うこととし、未使用額は、その経費に充てることにする。
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