研究課題/領域番号 |
24650503
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
松島 照彦 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (60199792)
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キーワード | 動脈硬化 / mRNA編集 / リポタンパク / アポリポタンパクB48 / 転写制御 / クルクミン / レスベラトロール / ゲニステイン |
研究概要 |
目的:心血管疾患の発症リスクとして食後高脂血症の影響が注目されている。これについて腸管由来のカイロミクロンの分泌・代謝の分析が重要である一方、食品成分の動脈硬化予防効果が関心を集めている。本研究では培養腸管細胞を用いて、食品成分が腸管における脂質代謝に与える影響を明らかにすることを目的に検討を行った。方法:多孔膜メンブレンをもつ二重底デッシュを用いCaCo-2を極性培養し、食品成分を脂質ミセルと同時に上部漕に添加し、下部漕に分泌されるカイロミクロンのApoB-48等の測定を行った。ApoB-48の測定にはApoB-48特異的モノクローナル抗体4C8によるELISA法を用いた。さらに併せてApoB-100、ApoA-I、カイロミクロン・トリグリセライド(TG)の測定を行った。結果:ApoB-48の分泌は、ワインポリフェノールのResveratrol(Re)、大豆イソフラボンのGenistein(Ge)、ターメリックのスパイス成分のCurcumin(Cu)において濃度依存的な減少が見られた。ApoB-100の分泌は見られなかった。また、TG測定では、ReとGeの各濃度ともコントロールに比べ差はみられなかったが、Cu 140M、200M添加ではコントロールに比べ各々減少がみられた。さらにCuはHDLの構成リポタンパクであるApoA-Iが増加しており、HDLが増加している可能性が示唆された。【結論】ApoB-48はカイロミクロン1粒子に対して1分子存在しているため、ApoB-48の減少はカイロミクロンの粒子数の減少を反映していると考えられる。ReとGe添加でTGの分泌量に変化がないことから、両者の添加により分泌されるカイロミクロンは、粒子数が減少する一方でサイズが大型化している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に発見した3種の栄養成分によるアポタンパクB48分泌の抑制について、今年度はリアルタイムPCRを用いて、これらが遺伝子転写レベルまたmRNAの編集のレベルで影響を与えていることを解明することができた。これは予想外の大きな収穫であった。 一方、今年度は反転腸管を用いた組織実験、および、ウサギ個体を用いた実験に着手する予定であったが、できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
システムを確立することができた細胞実験について、3種の栄養成分がトリグリセライドの分泌に与える影響を調べる。また、トリグリセライド分泌に関連した代謝関連因子であるFABP-A,MCTPなどの遺伝子転写を観察し、調節の機序を解析する。 マウスの反転腸管を用い、脂質の吸収分泌の測定計を確立する。これを用いて3種の栄養成分が組織レベルで与える影響を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に使用予定であった消耗品費が研究の進行の事情により翌年度に行うことになった。(培地中に分泌されたトリグリセライド量の測定のための酵素試薬、反転腸管実験系を試作するための動物購入の費用) 培地中に分泌されたトリグリセライド量を測定する。反転腸管実験系をマウスを用いて作成する。次年度使用学は次年度予算と合わせて消耗品費として当てる予定である。
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