背景と目的:心血管疾患の発症リスクである食後高脂血症の要素カイロミクロンの分泌について、申請者らが開発したApoB48ELISAと培養腸管細胞、組織、動物を用いて、食品成分が腸管におけるリポ蛋白代謝に与える影響を明らかにすることを目的に検討を行った。 方法:CaCo-2を極性培養し、食品成分を脂質ミセルと同時に上部漕に添加し、下部漕に分泌されるカイロミクロンのApoB-48、ApoB-100、ApoA-I、triglycerideの測定を行った。マウスの反転腸管を用い、食品成分がカイロミクロン分泌に与える影響、家兎を用い食品成分がカイロミクロン分泌に与える影響を観察した。 結果:培養腸管細胞におけるApoB-48の分泌は、ワインポリフェノールのResveratrol(Re)、大豆イソフラボンのGenistein(Ge)、ターメリックのスパイス成分のCurcumin(Cu)において濃度依存的な減少が見られた。TG測定では、ReとGeの各濃度ともコントロールに比べ差はみられなかった。CuではHDLの構成リポタンパクであるApoA-Iの増加がみられた。反転腸管ではカイロミクロン分泌は測定感度以下であった。家兎においては食品成分による有意な変化は認められなかった。 考察:ApoB-48はカイロミクロン1粒子に対して1分子存在しているため、腸管細胞からのApoB-48分泌の減少はカイロミクロンの粒子数の減少を反映していると考えられる。ReとGe添加でTGの分泌量に変化がないことから、両者の添加により分泌されるカイロミクロンは、粒子数が減少する一方でサイズが大型化している可能性が示唆され、生体内での動脈硬化の予防に資する可能性があると考えられる。今後、組織、個体における実験を継続する予定である。 この結果は、The 20th International Congress of Nutrition、The Third Symposium on Chylomicron in Disease、第36回日本臨床栄養学会総会において発表した。
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