ラクターゼ-フロリジン加水分解酵素(ラクターゼ)は、哺乳動物の小腸粘膜細胞に存在し、母乳中に含まれる唯一の炭水化物源であるラクトースを加水分解する。ラクターゼは胎生期後半より発現し、出生を頂点として離乳期に至るまで著名に発現低下することが知られているがその低下機構は未だ明らかにされていない。従来の発現機構解析は、主に遺伝子配列とその結合タンパク質の解析から進められてきたが、現在までにその発現低下機構を解明した報告はない。近年、細胞内で発現しているRNAの中にタンパク質をコードしていないが、低分子RNA(miRNA)自身が遺伝子発現をmRNAレベルで抑制することが示されてきている。また、クロマチンの構造変化も視野に入れた解析方法によりラクターゼ発現低下の機構の解析を進める。本研究では低分子RNAがラクターゼ遺伝子の転写レベルの抑制にはたらいているのではないかという仮説を立てて、その検証を行う。 Sprague-Dawley系ラットの哺乳期から離乳期に至るまでの2日、10日、5週、10週の小腸粘膜上皮細胞を回収し、ホルマリンでDNAとヒストンなどのDNA結合タンパク質を架橋した後、超音波処理により可溶性のクロマチンにし、これをアセチル化ヒストンに対する抗体で免疫沈降した。各種抗体による免疫沈降物からDNAを精製し、PCR法にてラクターゼ遺伝子プロモーター領域が解析したが当該遺伝子のプロモーター両液を得ることが出来なかった。また、同様の日齢の小腸粘膜上皮細胞を回収し、ゲノムDNAを調製後、バイサルファイト処理し、DNA中の非メチル化シトシン残基をウラシル残基に変換し、メチル化シトシンとの区別を行い、DNAを鋳型としてラクターゼ遺伝子の5’上流領域をPCR法により増幅したが、増幅産物を確認することが出来なかった。
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