研究課題/領域番号 |
24650507
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
松本 晋也 京都女子大学, 家政学部, 准教授 (30263156)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 成人病胎児起源説 |
研究概要 |
本研究は、線虫(Caenorhabditis elegans)が成人病胎児期起源説(FOAD説:Fetal Origin of Adult Diseases Theory)のモデル動物として使えるのかという点を明らかにすることを目的としている。申請者はこれまでに飢餓を経験した親線虫から生じた仔線虫において、脂肪蓄積量が増加するという知見を得ている。これは、線虫において成人病胎児起源説が成立する可能性を示唆するものである。初年度(H24年度)は、この知見をさらに検討した。 1)再現性 飢餓を経験した線虫を親に持つ仔線虫が、コントロール線虫に比べ脂肪蓄積量が多いという実験結果については再現性があることが確認できた。 2)脂肪代謝遺伝子の発現 脂肪蓄積量が増えたという実験結果は脂質結合性蛍光色素NileRedを用いた蛍光観察法で得られたものである。この知見を分子生物学的観点から検討するため、脂肪代謝関連遺伝子の発現パターンを検討した。脂肪酸合成酵素、脂肪代謝関連遺伝子転写因子、脂肪合成酵素の各遺伝子に対するプライマーを合成し、対象線虫からmRNAを調製する段階まで到達した。これらmRNAを用いてRT-PCRにて各遺伝子の発現量の変化を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画ではH24年度は、飢餓線虫から生じた仔線虫では脂肪量が増えるという知見を分子生物学的、機器分析手法を用いて確かなものにするとしていた。上述のように、分子生物学的検討は遂行できたものの、機器分析的解析は遅れている。機器分析的解析には着手したものの、脂肪抽出に必要な線虫量の検討に時間を要したことがその原因である。既報にしたがい、当初3-5万匹の線虫から脂肪抽出を試みたものの、ガスクロマトグラフィー(GC)、GC-MS(質量分析計)解析に必要な脂肪量を確保することができず、改めて20万匹程度の線虫から脂肪を調製すべく研究計画を変更したため、大幅に研究の進展が遅れた。しかし、新計画による脂肪調製の目処は立ったことから、今後は計画通りに進展するものと期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
親線虫が飢餓を経験すると仔線虫の脂肪蓄積量が増えるという知見をさらに多方面から解析する。具体的には、1)線虫体内の脂肪を調製し、実際に増えたことを定量的に示す 2)エサ摂取量が変化していないことを確認する の2点を精力的に行う予定である。 同時に、親線虫の仔線虫への影響は脂肪蓄積量だけに留まるのかという疑問に答えるべく、仔線虫の寿命、生殖能力、運動能力を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、前年度に引き続き実験器具、試薬、プライマー合成などに使うとともに、平成25年6月に米国ロサンゼルスで開催される第19回国際線虫学会参加旅費としても支出する予定である。この学会では、本年度の研究結果を発表し、議論するとともに意見交換、情報交換を行う。
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