糖尿病や免疫異常が原因となり惹起される腎炎に細胞内エネルギーセンサーのAMP-activated protein kinase(AMPK)の関与が注目されている。糖尿病腎症やループス腎炎においてレスベラトロールなどの食品抗酸化物質によるAMPK活性化やAMPK賦活剤により腎の肥大や炎症が軽減されることが報告されている。そこで、本研究ではIgA腎症においてもレスベラトロール(RSV)及びアデノシン一リン酸(AMP)の投与が腎臓AMPKを活性化するか、IgA腎症マウスの病態改善に有効かを検討した。 RSV及びAMPをIgA腎症マウスに20週間投与したところ、腎機能障害の指標である尿中アルブミン排泄量が低下することを確認した。引き続き、腎臓組織学的検査、腎臓炎症性サイトカイン濃度及びAMPK発現を調べた。組織学的検査では、RSV投与、AMP投与及び対照マウスにおいて腎糸球体にIgAの沈着が認められた。しかし、糸球体領域のメサンギウム増殖はAMP群で抑制された。炎症性サイトカインのIL-6及びIL-1β濃度に変化はなかったが、AMP群のTNF-α濃度は対照群に比べ有意に低下した。また、腎総AMPK発現は正常マウスに比べIgA腎症マウスで減少した。ところがRSV及びAMPマウスではその発現は減少しなかった。さらにリン酸化AMPK(活性型)は対照マウスでは検出されなかったが、AMP及びRSV投与マウスではその発現が認められた。 以上の結果より、IgA腎症マウスで腎臓AMPK発現が減少することがわかった。一方、RSV及びAMPはAMPK発現を増加させ、さらに活性化させることが示された。特にAMPはメサンギウムの増殖を抑制し、腎TNF-α濃度を低下させ、尿中アルブミン排泄を抑制したことから、AMPがAMPK活性化を介してIgA腎症において防御的に作用する可能性が示唆された。
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