研究課題/領域番号 |
24650511
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大野 栄三 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60271615)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 自然科学教育 / 授業分析 / 物理教育 / 授業解釈 / 意味論 / argumentation |
研究概要 |
1)フレームワークの研究開発 これまでに収集されたデータを使って、物理授業の談話構造と展開を分節談話表示理論によって分析した。その結果、授業における教師と子どもの発話の連関を、ダイアグラムを用いた中間段階の解釈として表現できることを確認した。この中間段階の解釈に対して、特に議論(argumentation)の過程に着目し、Toulmin's argument patterとWaltonのArgumentation schemesを使ってさらに分析を行った。子ども一人ひとりの発話の展開を解釈するにはWaltonのArgumentation schemesが適していることがわかった。 Toulmin's argument patternは、複数の子どもからの発話を組み合わせることによって、授業談話の中に部分的に実現していると解釈された。さらに、教師が日頃意識している授業展開についてインタビュー調査を行い、中間段階の解釈に対する上記の分析結果を検討した結果、Toulmin's argument patternらしき構造と判断していた授業展開は、インタビューで得られた教師が日頃意識している授業展開を使って解釈することもできた。 以上のことから、分節談話表示理論を使った中間段階の解釈は、授業談話のデータから得られる授業展開や教師が日頃から意識している授業展開と関連づけて考察することが可能であり、授業談話の効果的な表現手段であると考えられる。 2)国際比較研究 本研究の方法論について、その成果を国際会議、共同シンポジウムで報告し検討を行った。学校現場の教師が、議論(argumentation)をどのように理解しているのかを日韓で比較調査した。中間段階の解釈に対する上述の分析結果は、この調査データを利用している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本となるフレームワークを開発し、その成果を平成24年7月にトルコで開催された国際会議(WCPE2012)で報告した。予定していた国内学会での報告は実施できなかったが、フィンランド・ヘルシンキ大学で平成24年10月に開催された研究会で成果報告を行うことができた。平成24年12月に開催したソウル大学、ミシガン大学、台湾師範大学との共同シンポジウムで研究成果について討論した。既存のデータを用いることで研究が進捗しているため、データ取得と整理のために用意していた人件費を節約できた。 中間段階の解釈を修辞関係を使ったダイアグラムで表現することによって、教室談話の構造や分節化を視覚的にとらえ分析することができた。複数の生徒の発言をからなるダイアグラムに対して、Toulmin's argument pattern やWaltonのArgumentation schemeを用いることによって教室談話特有の構造を考察した。さらに、このダイアグラムで表現された解釈の中に、教師が日頃から意識している授業展開が現れていることを指摘した。 おおむね計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるので、研究を補強するための新規データの取得と整理を行い、それを活用した研究を展開する。あわせて研究成果の報告とまとめを行う。 当初の目的をより効果的に達成するため、教室談話の分析結果と教育内容構造との間のマッピングについての研究を、フレームワークの研究開発の目的に加えることにする。教室談話の分析は修辞関係を用いたダイアグラムとして表現されている。教育内容構造を適切なダイアグラムで表現し、それらの間を写像関係で対応づけることにより、授業の展開と教育内容の関係が明らかになるだろう。そのためのデータ取得と整理を行うが、これは当初の計画内で可能である。 情報収集と研究打ち合せのために英国訪問を予定していたが、フィンランドで6月に開催予定のワークショップ(概念変化とモデリング)に参加することにする。本ワークショップはConceptual Change and Interdisicplinary Issuesがテーマであり、本研究を展開する上で貴重な情報収集と研究打ち合せができると考えている。その成果をふまえて、7月に国内で開催される国際会議、及び8月にチェコで開催される国際会議(ICPE2013)、10月に国内で開催される日本教育方法学会研究大会等で研究成果を報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
教室談話の分析(中間段階の解釈)と教育内容構造との間のマッピングを研究するため、新しくデータ取得と整理を行う。このために平成24年度に未使用であった人件費を利用する。 成果報告のための国内旅費については、当初予定していた日本教育方法学会研究大会での発表に加えて、国内で開催される国際会議(APPC12)での発表も行うために使用する。外国旅費については、8月に開催される国際会議(ICPE2013)での成果報告に使用する。
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