研究課題/領域番号 |
24650514
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
今村 哲史 山形大学, 大学院教育実践研究科, 教授 (00272055)
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研究分担者 |
那須 稔雄 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (00083436)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境教育 / 意思決定 / 環境リテラシー |
研究概要 |
平成24年度は研究の初年度として,研究体制の構築と,環境リテラシーとしての「意思決定能力」の明確化及び児童・生徒の実体解明のための調査の準備を行った。 具体的には,まず,①日本及び米国の環境教育及び科学教育の「意思決定能力」の育成に関する先行研究や取り組みについて,文献を中心に調査を行った。特に、米国の北米環境教育協会(North American Association for Environment Education:略称NAAEE)における環境リテラシー育成のための学習ガイドラインや指導のためのガイドラインを調査した(今村)。さらに,日本での環境リテラシーや意思決定に関する研究について、エネルギー環境教育及び科学教育に関わる学会やESDの指導者養成プログラム(愛媛大学)についても調査を行い,情報の収集に努めた。以上のことより,児童・生徒に必要な意思決定能力や意思決定のための具体的支援ツールについて明らかにした。その成果の一部は,著書としてまとめた(今村)。 次に,②地域での研究協力体制を確立するために,「やまがたエネルギー環境教育研究会(代表:那須稔雄)」とも連携を図り,意思決定能力育成のための研究協力体制について検討した。また,地域でのネットワーク構築のための取り組みの一貫として,環境教育講演会や体験活動を実施した(今村,那須)。 そして,③先行研究の調査結果から,NAAEEの学習ガイドラインを参考にして,「環境リテラシー」及び「意思決定能力」に関する小学校用の調査問題を試作し,調査を実施(試行調査)した(今村)。その結果,児童は環境問題に対する意識は高いものの,実際に意思決定やそれに基づいた行動について課題が多いことがわかった。これにより,調査用紙の有益性も確認した。ただし,研究会を開催してこれらの成果も含めて意見交流を行うことはできなかったのは残念であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は研究の初年度として,①研究協力体制の構築を図り,②日米の環境教育の先行研究を調査し,環境リテラシーとしての意思決定能力について明らかにすることである。そして,③児童・生徒の意思決定能力に関する実体解明のための調査の準備を行うことであった。 これに対して,まず①研究協力体制については,「やまがたエネルギー環境教育研究会(代表:那須稔雄)」と連携を図り,環境教育に関する講演会や活動(「環境に学び・遊ぶ」/講演:地域環境を生かした朝日町の取り組み、他))を行うことができた。 次に,②意思決定に関する調査では,日本及び米国の環境教育及び科学教育の「意思決定能力」の育成に関する文献を調査・分析した。特に,米国における環境教育のスタンダードともいえる北米環境教育協会(NAAEE)の学習ガイドラインを取り上げ,調査した(今村)。また,科学教育及び環境教育に関連する学会や地域等での先進的な取り組みについても調査を行い,情報の収集に努めた。その結果,児童・生徒に必要な意思決定能力や意思決定のための具体的支援ツールについて明らかにできた。尚,これらの研究成果の一部については,著書(「意思決定と理科授業」)としてまとめた。ただし,学会等での研究成果の発表(中間段階での成果)は,次年度行う予定である。 そして,③調査問題の作成については,先行研究の調査結果から,「環境リテラシー」及び「意思決定能力」に関する小学校用の調査問題を試作し,調査を実施(試行調査)した(今村)。その結果,調査用紙の有益性を確認した。尚,研究会を開催して本年度の成果も含めて意見交流を行うことができなかったのは残念であった。 以上のことより,当初の計画に対して,多少の課題はあるものの想定の範囲内であり,おおむね予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,平成24年度の研究成果をもとに,さらに「意思決定能力」育成に関する調査を進めるとともに,試作した調査項目等を改善し,本調査を実施することである。また本研究で構築したネットワークを基に,環境教育に関する研究会を開催して多くの情報を収集する。そして,収集した情報を基に,学校教育における意思決定能力育成プログラムを試作することである。 具体的には,まず,①環境リテラシーとしての「意思決定能力」について,さらに調査を行うために,北米環境教育協会(NAAEE:米国イリノイ州)をはじめとする研究機関の訪問や,米国の科学教育または環境教育関連学会等への参加を通して,学習及び指導のためのガイドラインやスタンダードに関する聞き取り調査と資料の収集を行い,その結果を分析することである(今村)。 次に,②これまでの意思決定能力に関する試行調査やその他の調査結果を基に,調査問題(調査用紙)を改善し,児童・生徒を対象として環境リテラシー及び意思決定能力に関する本調査を行い,その結果を分析して実態を明らかにすることである(今村・那須)。 また,③科学教育及び環境教育に関連する学会を中心に,これまでの研究成果を発表する他,やまがた環境教育研究会(仮称)を開催して,研究結果を報告する(今村・那須)。その際には,日本及び外国(米国または韓国)の環境教育の専門家を講師として招き,講演やパネル討論会等を行う。 最後に,④ ①~③の成果を基に,「意思決定能力」を含む環境リテラシー育成のためのガイドラインを示し(今村),これに則った意思決定能力育成プログラムを試作することである(今村・那須)。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究推進にあたっては,昨年度未購入であった印刷機(プリンター)を購入する。その上で,2年目の研究計画に沿って研究費を使用する。平成24年度研究費の残金(当初予定額の残金:138,822円)については,次年度に移行し,物品,旅費,謝金に充当して,平成25年度の研究の一層の充実を図る予定である。 まず,より詳細な情報の収集と調査のために旅費が必要である。①環境リテラシー及び意思決定能力育成に関する先進的研究について国内外の研究施設を訪問して調査を行う。特に,米国の北米環境教育協会(NAAEE)や科学教育または環境教育関連学会等で調査を行う予定である。よって,米国への出張旅費が必要である。また,国内でも引き続き意思決定に関する調査を行うために国内出張旅費が必要となる。さらに,③それまでの研究成果について学会等で発表するため,国内旅費も必要である。 次に,②調査問題の作成と調査結果の処理のために,その基礎資料となる文献(参考書)をはじめ,環境教育関連教材を購入予定である。また,調査結果の記録や印刷にあたって,記録媒体(バードディスク,メモリ、DVD等)や印刷(インク,トナー、用紙等)に関する物品を購入する。 ③研究会の開催にあたっては,講師への謝金や旅費,ならびに会場使用費や通信費等,運営のための諸費用が必要である。さらに,調査とその結果の処理の補助,研究会の運営補助等,臨時に補助員(臨時人夫)を雇用して作業の効率化を図る。 次年度は,児童・生徒に必要な意思決定能力の明確化と初等・中等学校における実践の実態を明らかにすることが課題であり,意思決定能力育成プログラム作成のための基盤となる情報の収集と分析を行うために研究費を使用する予定である。
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