研究課題/領域番号 |
24650514
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
今村 哲史 山形大学, 大学院教育実践研究科, 教授 (00272055)
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研究分担者 |
那須 稔雄 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (00083436)
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キーワード | 環境教育 / 意思決定 / 環境リテラシー |
研究概要 |
本年度(平成25年度)は,昨年度(平成24年度)の研究結果をもとに,さらに「意思決定能力」育成に関する調査を進めるとともに,環境リテラシー及び意思決定に関する調査問題を作成し,実施することであった。 具体的には,まず,①環境教育における意思決定能力育成に関して,さらに調査を行う。米国における環境リテラシー育成に関する研究や実践活動の状況について,北米環境教育学会(NAAEE)の学習のためのガイドラインについて分析した。特に,ミドルレベル(5-8学年)を中心に行った(担当:今村)。次に,②米国における最新の意思決定能力育成の研究の調査のために,科学・技術・工業・数学・環境等を含めた新しい科学カリキュラム改革運動の中心であるSTEM教育を積極的に推進している米国アイオワ州(アイオワ大学及び小学校)及びミネソタ大学(ミネソタ大学及びミドルスクール)を訪問し,環境リテラシーだけでなく科学的・技術的リテラシー等を中心とした包括的なリテラシー育成の基本的考え方と学校現場での実態を調査した(担当:今村)。尚,STEM教育には,北米環境教育学会(NAAEE)も大きな影響を与えており,調査の必要性があると判断した。 ③前述①で作成した調査問題(調査用紙)について,中学校生徒を対象に調査を行い,その結果を分析した。そして分析結果から,中学校における環境リテラシー,特に「意思決定能力」の育成に関する問題点を指摘するとともに,調査用紙の有益性も確認した(担当:今村・那須)。この研究成果は,連携協力を行っている山形県教育センターで等を通じて,山形県環境教育指針の改訂にも活かされることとなった(担当:今村)。ただし,研究会を開催してこれらの成果も含めて意見交流を行うことはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,①「意思決定能力」についてさらに調査を進め,②特に,米国での訪問調査を行い,③調査結果を基にした調査問題(調査用紙)の改善を行い,④ ①~③の成果をまとめることで,児童・生徒の意思決定能力に関する現状とともに,その育成の考え方や指導方法についても明らかにすることであった。 これに対して,まず①については,ミドルレベル(第5~8学年)の北米環境教育学会(NAAEE)の学習ガイドラインを翻訳・分析した(今村)。次に,②の米国での訪問調査では,昨年度できなかった新しい米国科学教育スタンダード(NGSS)や,STEM教育を中心に,意思決定能力の育成に関する現地視察と聞き取り調査を行った(今村)。特に,アイオワ州やミネソタ州といった教育研究先進地域での大学と現地小中学校での様子も調査し,情報の収集に努めた。その結果,環境リテラシーだけでなく科学的・技術的リテラシー育成の一環として,意思決定や批判的思考スキルの育成を重視していることが明らかとなった。そして,③調査問題の作成については,①の先行研究の結果から,「環境リテラシー」及び「意思決定能力」に関する中学校用の調査問題を試作し,調査を実施(試行調査)した(今村・那須)。その結果,調査用紙の有益性を確認した。尚,研究会を開催して本年度の成果も含めて意見交流を行うことができなかったのは残念であった。また,北米環境教育学会の活動(学会)には参加できなかったのは残念であったが,各州の環境リテラシーに関する情報は取集できた。 以上のことより,当初の計画に対して,多少の課題や一部研究の軌道修正は必要であったが,想定の範囲内であり,おおむね予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,昨年度までの成果をもとに,さらに「意思決定能力」育成に関する調査を進めるとともに,児童・生徒の意思決定能力育成のための指針(ガイドライン)を作成することである。そして,3ヶ年の研究のまとめとして,「意思決定能力」育成プログラムを開発し,実践を通して,その有益性を検証することである。 具体的には,まず,①NAAEEの学習ガイドライン,STEM教育他,環境教育で育成すべき意思決定能力について明らかにして、それをもとにガイドラインを作成し,改善を行って完成させることである。次に,②作成したガイドラインに基づいた意思決定能力育成プログラムを作成する。そして,小・中学校において実践し,その結果を研究会で報告する。そして,③3ヶ年のまとめとして,我が国における環境リテラシーとしての「意思決定能力」育成のためのプログラム開発とその実践の成果について報告書にまとめる(今村・那須)。これにより,現代の高度科学技術社会において『意思決定』ができるような高度な能力をもった人材育成の一つの方法を提案し,研究の総括とする。尚,これらの成果については,環境教育及び科学教育関連の学会でも発表する。開発した「意思決定方力」育成プログラム及び報告書等,関係する資料については,希望する教育関係機関にも提供する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度購入予定であったプリンター(レーザー複合機)について,これまでに使用していたものが使用可能であったので新規購入を1年控えた。よってプリンター本体及びインクトナーの費用が未使用であった(今年度は購入予定)。また,講師を招いての研究会の開催を2回予定していたが、1回しか実施しなかったため謝金に残額が多くなった。その他の費目では,研究成果の一部印刷を行わなかったため,印刷関係費用が繰り越しとなった(今年度使用予定)。以上が,残額の主な理由である。 本年度の研究推進にあたっては3年目の研究計画に沿って研究費を使用する。 まず,①環境リテラシー及び意思決定能力育成に関する先進的研究について訪問調査や情報交換,研究成果発表等のために旅費が必要である。次に,②意思決定の関する分析のための文献をはじめ,環境教育関連教材の購入を行う。また,調査結果の記録や印刷のために,記録媒体や印刷費も必要となる。さらに,③研究会開催にあたって,講師謝金や旅費,会場使用費や通信費等,運営の諸費用が必要である。尚,各作業にあたって臨時に補助員(臨時人夫)を雇用する。最終年度は,児童・生徒に必要な意思決定能力育成ガイドライン,意思決定能力育成プログラムの作成と実践,そして作成した意思決定能力育成プログラム及び成果を報告書にまとめて公表するために研究費を使用する予定である。
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