研究課題/領域番号 |
24650515
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
大辻 永 茨城大学, 教育学部, 准教授 (20272099)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 理科 / 仏教 / 丸本喜一 / NHK理科教室 / 無 / 拝育 |
研究概要 |
研究実施計画通り、研究の進め方等について、国内外の研究協力者との研究打合せから本研究は出発した。日本化された仏教思想が、我が国の科学教育実践活動にどのような影響を与えているか。(1)定量的な手法を用いて示す部分については、前段階的な位置を占める調査を行った。すなわち、科学教育の、自然科学に関係しない側面の中で、仏教的と認められるものについて明らかにした。この成果は学部紀要に投稿し、現時点(2013年4月)で発刊を待つところである。(2)定性的な部分については、(a)富山市内の寺院にある「丸本文庫」に2度(一度は研究協力者と共に)訪問し、資料を収集した。収集した資料(OHP、カセットテープ、整理カードなど)の一部について(OHPはすべて)、関係者の協力を得ながらデジタル化することが出来、その成果は丸本文庫において一般の利用に供するまでになっている。当初目標にした丸本喜一の「拝育」についての資料には、まだ行き当たっていない。(b) 1970-80年代にNHK「理科教室」に出演していた関係者が、仏教思想が認められる回顧録をホームページで明らかにしていたことから、当番組の出演者・制作者にご参集いただき、インタビューを実施した。そこでは、「子役の声優」の先駆者であった方が自らを積極的に表現することよりも、むしろ、自分を「無」にしようと日々努力されていたことなどが明らかになった。 研究の方針や一部の成果について、国内外で(盛岡、フィリピン、オマーンにおいて)学会発表を行った。また、関係するこれまでの成果を「中間まとめ」(65ページの冊子)として2月末に発刊し、ホームページでも公開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的は、大きく分けて3つの柱からなっている。(1)我が国の科学教育実践活動を考察した場合、どのような局面においてその影響が現れているかを定量的に示す。これについては、前段階に当たる調査を行い、学部紀要に投稿していることから、順調に進んでいると言える。本調査については、次年度に行う。(2)伝統的な理科授業の実践から現れ出た理念の中に、日本化された仏教思想の影響を定性的に明らかにする。これについては、予定していた丸本文庫の資料収集が進んでいるだけでなく、インタビュー調査も実施できたことから、順調に進んでいると言える。(3)これら実証的な結果から、今後の我が国における持続可能な社会を目指した科学教育実践の指針を探る。これについては、次年度、最終年度に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、3つの柱からなる。(1)定量的な手法を用いる部分については、前年度、前段階となる調査を実施、活字化した。二年目は、因子分析・共分散構造解析を用いた本調査の論文執筆を視野に進める。(2)定性的な手法を用いる部分については、質的データ解析ソフトNVivoを用いて、丸本氏が目指した「拝育」などを代表とする、科学教育実践に見られる日本文化、仏教的な影響を探る。(3)これら実証的な結果から、今後の我が国における持続可能な社会を目指した科学教育実践の指針を探る。また、国内外において本研究の成果について積極的に発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年7月に香港において行われる東アジア科学教育学会には、すでに発表申込みを行い、審査を通過した。研究協力者と共にミニシンポジウムを開く。また、国内の学会に参加し、成果を発表する。この他に、富山市の丸本文庫を訪れ、資料収集を継続して行い、デジタル化を進める。このことから、研究費は旅費を中心にした使用になる。定量的、定性的な研究についても、「推進方策」に示した計画通り進める。
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