東日本大震災を起因とした原子力発電事故に関する報道では、報道者でも単位を誤って伝えるなど社会における放射線に関する知識不足が多く見られた。これらは我が国の放射線教育が十分機能していないことを示す一面であろう。本学では、中高物理教員を始めとした多くの理科教員を輩出しているが、物理学専攻の学生ですら放射線項目(原子分野)のみについては高校時に十分学習していないため学生は不安を抱えて入学をしてきている。さらに幼小中高の教育現場では保護者が自ら測定した結果に対して返答できなかったので本学の教員に講演、現職教員研修の放射線分野の要望が急増した。以上のことから教育関係者に放射線のより深い知識のみならず放射線の測定方法、自然放射線などの知識からこれらの放射能問題に教育かつ応対できるレベルが求められている。従って本研究では前年度より生活レベルまで入り込んだ本問題に教員が自ら判断できるような教員養成カリキュラムの構築を行った。今年度はこれらの現場での実証とカリキュラムのさらなる改良を行った。なお実証は、免許状更新講習、東京都研修棟で行った。本年度では、測定だけでなく放射線のイメージ化の向上のため、中高の生徒でも作成できるような霧箱の使用を講義に導入した。ゆえに本カリキュラムで自然放射線を定常的に観測できるようにし自然にはどの程度放射線があるのか、報道される放射線量はどの程度なのかといったことをより一層正しく知ることができるようになったと考えられる。
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