自然科学としての物理学を大学生が深く理解するためには、実験と理論を総合的に学ぶことが大切である。学生実験の時間が授業とは別にあるが、それだけでは十分とはいえない。授業の内容に即した実験が必要とされている。そのために、大学の物理学の授業中に実験を取り入れる方法を検討し、試作し、実施した。 授業は科目ごとにシラバスが作られているが、科目間には表立っては認識されていないものの、横のつながりが深くあるので、特に大学初年級の振動と波、熱、力学、電磁気学について、大学の教科書や大学生が読む参考書を中心に文献調査を詳しく行い、科目間の共通な項目と独自の項目を検討した。大学生が入学時に持っている知識を把握するために、高校の教科書も詳しく検討した。 実験装置は、学生が後で自分でも製作して自分で実験を行ってみよう、という意識を高めるために、なるべく簡易で、しかも核心をつく実験装置であることが大切である。故障した電気製品の部品などを再利用して、なるべく安価に製作するように努めた。 大学の高学年においては、学生は原理としては理解していても、具体的に数値がどのような値になるのか実感を持っていない現象が多くあることがわかったので、それらを実感できる実験になるように配慮した。 大学院においては、様々な大学の出身者がいるので、大学学部での実験の習得状況が学生によりたいへん異なるため、大学院の初期に共通の知識を持てるようにすることが大切である。そのために大学院の「物理基本実験」テキスト(約70ページ)を執筆した。最小限この知識を持つことが必要である、というミニマムを示している。このテキストに記述される実験は、授業時間中にも活用されていて、大学で物理実験をいろいろな機会に行うための拠点となっている。
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