研究課題/領域番号 |
24650524
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
藤岡 達也 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (10311466)
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研究分担者 |
秋吉 博之 就実大学, 教育学部, 教授 (00454851)
柚木 朋也 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00311457)
土井 妙子 金沢大学, 学校教育系, 教授 (50447661)
小栗 有子 鹿児島大学, 生涯学習教育研究センター, 准教授 (10381138)
五十嵐 素子 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (70413292)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 世界ジオパーク / 地学教育 / STS教育 / 持続可能な社会 |
研究概要 |
まず,日本ジオパーク等が存在する地域教材の分析を行った。世界遺産や世界ジオパーク等を有する自然景観(地史・地質・地形・気候・気象・水文・植生・生態系など)の特徴や地域産業に関連する内容を,発信可能な日本型の環境教育,ESD の観点から整理し,それらを分析した。特に科学リテラシー育成に繋がる地域や学校教育で実施されている方法や内容,システム構築についての基礎資料を収集し,その課題を探った。 次に,ジオパークを構成する要因となる自然現象と自然災害の関連性を考察した。日本ジオパークの中で地震災害・火山災害・気象災害・地盤災害などに関係する自然災害の特色を示すものを取り上げ,整理し,ここでは,資源の供給や自然景観形成の面も重視した。また,自然景観については最近の災害だけでなく,各地域に発生した大きな自然災害との関連についても,STS や科学リテラシー育成の観点から分析を行った。 これらを踏まえて,世界ジオパークを活用した巡検を伴う実践を行った。特に,世界ジオパークに登録されている糸魚川地域の小学校3校において,日本列島の形成をテーマにし,自然景観の成り立ち,自然災害の発生などを取り入れた。この取り組みによって,地域の自然環境等に対して学習者の意識がどのように変容したか,研究授業前後の質問調査から,取扱い内容の効果,問題等を探った。また,この調査では,一部一般人としての保護者も対象として地域の自然環境を踏まえた巡検を実施し,保護者と子どもの意識向上等から,地域にもとづいた科学教育,環境教育と関連した地学教育の意義を明確にすることを試みた。 また,国内において,世界ジオパークに認定されている地域の教材化や地学的自然に関する知識や技能の習得をベースにしながらも,教科横断総合的学習による学習の深化を意図した教育活動を実践した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,日本の学校教育での地学教育への取り組みが十分と言えない中,世界ジオパークや世界遺産登録地域を中心として,地域の活性化に繋がる環境教育・科学教育等と関連したこれからの地学教育の在り方を探ることが目的である。特に,自然景観や資源の供給など自然の恩恵を取り上げながらも近年注目されている自然災害や防災教育,地域復興に向けての課題など,自然の二面性を取り扱った教育開発の観点を重視してきた。具体的には,国内においても最初に指定された糸魚川世界ジオパークでの展開を実例として,地域の地学的自然等などの自然環境の有効活用を目指した教材や教育プログラムを開発した。その後,それらをもとに身近な地域に位置する市内の小学校3校をモデル校として数ポイントのジオサイトでジオパーク学習を行った。そして,学習者の質問紙調査やビデオ分析等による質的調査から,その教育的効果と課題が明確になった。さらに,教育課程における限られた教科の枠にとどまらない地学教育の位置づけを探り,教育委員会や市役所などの行政,保護者も含めた一般市民,研究機関としての大学,社会教育施設としての博物館等,地域が連携した新しい地学教育の方法の開発,システムの構築を明確にすることを試みた。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の実践や開発した教材を踏まえ,再度糸魚川世界ジオパーク内において,実験授業を行う。その教材やプログラムについて,質問調査紙等を用いて,教育方法の有効性を受講生に問う。これらを踏まえて,改良点や修正点,追加内容の必要性が生じた場合,現地調査を実施し,改善を行う。また,糸魚川世界ジオパーク以外の国内のジオパークにおいて,特に自然災害と関連した事例を収集・分析する。国内で既に世界ジオパークとして地域の学校等で取り組まれている先進事例やこれから登録を目指す日本ジオパーク等の事例を取り上,自然災害の特性や地域独自の特殊性,一般性を探る。例えば,北海道洞爺湖有珠山,島原半島,山陰海岸,室戸を対象として,地震・津波災害,火山災害,気象災害,地盤災害などの自然災害との関連性を明確にし,それが自然景観の形成とどのようなつながりがあるのかを,学校教育のカリキュラムと照らし合わせて,各学校での学習段階の地学教材として整理する。 一方,海外でのジオパークをはじめとした自然景観の保全と活用や地学的な内容を学校教育等でどのように取り扱っているのかを調査する。これまでの実践を踏まえ,学校だけでなく,市民を対象とした生涯学習教材としても活用できるような内容とし,観光による地域活性化につながることも意図した地域教材を作成する。さらにこの地域教材を市民講座や教員センターなどの教員研修の中で取り扱い,社会教育まで意識した教材・プログラムなどの開発を行う。具体的には,パワーポイント教材,動画,グラフ・データを集約したDVD 教材として提示する。 本研究で得られた成果をもとに,教員センター等で研修を行ったり,地域の市民講座などで関連した講座を開講したりする。それらを通して教材や教育プログラムの評価を行ない,地域の特色を取り入れた地学的リテラシー育成に貢献する教育内容,方法,システムの構築を明確にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1年目に開発した教材やプログラムをもとに糸魚川や洞爺湖有珠山などのジオパーク等で改善した野外観察・実習を行う。対象は児童生徒以外にも保護者等の一般市民の啓発や教員研修の一環としても試みる。そのために,現地調査や下見等の調査旅費,さらには,モデル授業時等でのバス借り上げのための費用は不可欠である。加えて,副読本や教材作成のための費用も一部は研究費補助金を充てる。また,質問紙調査や質的調査を実施するため,統計上のソフト購入,アンケートの分析やビデオ分析等の補助が必要である。研究成果の発表,発信,公刊などのためにも研究費補助金の一部を用いる。
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