研究課題/領域番号 |
24650524
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
藤岡 達也 滋賀大学, 教育学部, 教授 (10311466)
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研究分担者 |
秋吉 博之 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00454851)
柚木 朋也 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (00311457)
土井 妙子 金沢大学, 学校教育系, 教授 (50447661)
小栗 有子 鹿児島大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10381138)
五十嵐 素子 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (70413292)
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キーワード | ジオパーク / 地学教育 / 自然景観 / 糸魚川世界ジオパーク |
研究概要 |
平成23年度から小学校より順次改訂された学習指導要領に則った授業が展開されている。特に理数教育の充実が重視された今回の理科教育の内容は高度化が進むと同時にエネルギー・粒子・生命・地球の4領域の体系化が義務教育段階から高等学校での物理・化学・生物・地学までの系統性が確立されているところに特色がある。しかし,現状では,そのようにならず,高等学校での地学履修率は非常に低く,平成25年度は「地学」の教科書すら刊行されていない。このような中,中学校卒業後,社会人までを含め地学的なリテラシー育成のための取組が求められることが明らかになった。また義務教育段階においても一層の地学教育の充実が図られなくてはならない。 しかし,地学教育の必要性を自然災害に対する防災・減災に関する教育や今日的な環境・エネルギー・資源問題に対応するための基礎的知識習得だけでは,教育現場や地域社会に根付かないのはこれまでの種々の取組からも明確である。そこで,本研究では,地域のジオパークをどのように地学教育の活性化につなげるかをテーマとしている。 平成25年度は,前年度に引き続き,糸魚川世界ジオパークをフィールドとして,小学生を対象に研究野外観察を行った。学習指導要領で取り扱われている小学校理科の内容を超えても地域に根差し,子供たちが興味を持てば高度な内容を取り扱うことも可能であることが研究授業後の質問紙調査から明らかになった。また,教科書に即した副読本を開発し,これを用い,その効果を検証したが,小学生だけでなく,保護者や地域の人にとっても地域の環境理解に役立つことがわかった。 日本各地においてもジオパークの認定がされることが多くなっている。各地域の取組について地学的リテラシー育成の観点から,その共通性と差異性についても集約できつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
糸魚川世界ジオパークについてはそれなりの成果がまとまりつつある。しかし,正直なところ,他の国内外ジオパークについては,現地調査を含め,成果が十分出せているとはいいがたい。これには,昨年,年度途中で大学の異動という自分の個人的な理由が大きかったと言わざるを得ない。現地調査の時間的制約に加え,本研究テーマである日本の学校教育における地学教育の現状が厳しく,その状況と課題を明確にするために少し時間等を割かれたことも原因である。また,ジオパークによる地域の啓発も意識したために,学校教育だけでなく,社会教育の観点も明確にしようと地域の人への教育プログラムの開発,啓発等にも若干,時間をとってしまったことも課題である。 ただ,国内においても各地域における自然景観の多様性,考古学など自然と人間との関わりを重視したアプローチなど,教育,啓発には自然科学だけでなく,社会科学的なアプローチも,本研究を進めるには重要な意味を持つことが明らかになった。 同じユネスコに採択される世界遺産(特に自然遺産)と比べ,ジオパークには教育・啓発において,地域ごとにどのように意味を持つのか,また世界遺産にも活用可能な地学的リテラシーの観点とはどのようなものかを今後明確にする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
近年,ジオパークは地質学者からも注目され,アウトリーチ的な取り組みが多くみられるようになっている。最新の情報を収集しながらも地域に根差した地学的リテラシー育成の構築の方法を引き続き検討し,ジオパークの活用を専門の地質学者だけでなく,学校教育に根付くためにはどのような方法があるのかを探っていく。これまで,学校と地域への教育,啓発はそれぞれ個別に取り組まれてきたと言えるが,これを連動させる方法の確立に取り組む。それには,各地域でのジオパーク活用の現状と課題を詳細に追及し,自然景観の特色理解と学校での教育課程における理科・地学等の内容の取扱いの乖離を立証する必要がある。糸魚川ジオパークについては,糸魚川市教育委員会との連携のもと,それなりの成果が出せていると言えるが,今後他の国内の世界ジオパークへの汎用を探る。 さらに自然の恩恵と自然災害との両面を取り上げ,発達段階に応じて,これらのバランスを考慮する方法を検討する。現在,洞爺湖有珠山,島原半島等,実践に結び付けた分析を進めているが,これらを整理していく。国内のジオパークにおいても様々な多様性を持っており,多くの共通した自然災害との関連性,豊かな自然環境に基づいた先史・古代からの地域文化解明への貢献など,学際性を見い出し,新たな総合的な科目としての地学教育の再構築についても考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年10月に,それまでの上越教育大学から滋賀大学に急遽,異動したため,研究計画が大幅に変わった。 平成25年度に実施できなかったフィールド調査や研究授業を行う。
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