最終年度は以下の2項目について研究を行った。(1)授業に導入できる,授業に役立つ観察・実験方法の開発,(2)気象の観察・実験の体験型教員研修プログラムの構築,である。(1)では,小学校第4学年「水のすがた」の単元で行う水の凍結実験について,過冷却の観察頻度を抑制する実験方法の研究を行った。実験の結果,寒剤の温度によって過冷却の発生頻度が変化することがわかった。過冷却の発生を抑え,教科書通りの実験結果が得られることで,水の状態変化と温度との関係づけを図ることができると期待される。教科書通りの結果を得ることが難しいもう一つの例として,小学校第4学年「1日の気温の変化」の単元で行う気温の観察が挙げられる。大阪管区気象台で観測された5年分の地上気象観測データを用いて,気温の変化の仕方と天気との関係を調査した結果,子どもが学校で気温の観察を行う午前9時から午後3時まででは,晴れの日はその時間帯で最も高い気温と最も低い気温との差に大きなバラツキが見られた。これは,1日の気温の観察から「晴れの日は気温の変化が大きい」という結論を導くことは容易ではなく,複数日の観察が必要であることを示唆する。気温の観察を何日も行うことは時間と労力を要する。そのため,ワイヤレス温度ロガーを用いた遠隔測定による気温の観察を提案し,小学校の授業で実践した。(2)では,雲の発生実験,ダイヤモンドダストの発生実験,大気圧の実験,風速の測定などを取り入れた体験型教員研修プログラムの構築し,平成26年7月に「体験して楽しく学ぶ小学校理科-水と空の教室-」と題した教員研修講座を大阪教育大学天王寺キャンパスにおいて行った。講座で使用した気象衛星の雲画像やアメダスの雨量情報などのデジタル教材をWebページで公開し,講座を受講した教員に配布した。
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