研究課題/領域番号 |
24650538
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研究機関 | 女子栄養大学 |
研究代表者 |
山下 俊一 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (60256865)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 科学教育 / 自然科学教育 / リメディアル教育 |
研究概要 |
「一歩一歩学ぶ生命科学(人体)」はインターネットで学べる生命科学の初学者用教材である。医療系大学のリメディアル教育で採用され実績を上げてきた。本研究では、その効用をより促進するために、現在急増しているスマートフォン(スマホ)への対応を検討している。 本年度は2カ年計画の初年度であり、1)一歩一歩学ぶ生命科学の最も重要なターゲットである高校3年生と大学の新入生に対し、スマホでの一般的な学習アプリの必要性の調査、2)同被験者群に対し、一歩一歩学ぶ生命科学の既存webサイト(PC用)のスマホでのオンライン使用感やオフライン用アプリに必要な機能をアンケート調査、3)オフライン用アプリの試作を中心に活動を行った。 A高校3年生とB大学1年生に対する調査では、スマホの利用率はそれぞれ22.6%、55.0%であったが、B大学の非利用者のうち約半数が近日中にスマホに買い換えると回答しており、大学1年生のスマホ利用率は1~2年中に確実に7割を超えると予想された。B大学ではインターネットを利用する学習に対して70.8%が肯定的な回答をしたが、学習アプリを利用するか否かについては、無料であればどのような種類のものでもダウンロードして使ってみたいという回答が80%を占める一方、有料の場合は授業に関係あるものでも使いたくないという回答が圧倒的であり、お金をかけてまでスマホで勉強しようとは思わないという意識を感じ取れた。現在のPC用webサイトをスマートフォンで使った場合の調査では、画面全体を見ることができないので使いづらい、動画のダウンロードに時間がかかる、入力部分の選択が難しい等、スマホの機械的特性に起因する要望が多数寄せられた。 現在、オフライン用アプリの試作と試用をすすめる一方、オンラインに存在する豊富なコンテンツをどのようにスマホ用に最適な大きさのデータに分割するかを検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は2カ年計画の初年度であるため、基本情報の調査に多くの時間を費やした。大量のアンケートを迅速に作成し分析するため、フィニッシャ装備の高速プリンターを導入し、システムをOCRによるデータ解析に対応させた。その結果、A高校とB大学を中心に約1500サンプルを入手することができた。この結果は直ちに解析し、医学教育学会、栄養改善学会、日本生理学会大会等で発表した。これらの結果は、高校生および大学生に一歩一歩学ぶ生命科学によってリメディアル教育を浸透させるにはスマホ対応が最重要課題であるという本研究の方針を裏付けるのに充分であると考えている。一方、これらのデータ取得と解析に時間を費やしたために、オフライン用アプリの試作とスマホ用コンテンツの整備の進捗は充分とは言えない。 スマホ用コンテンツの整備が進まない一因として、現在あるPC用サイトをスマホの小さな画面に対応させる必要が挙げられる。当初、この部分はスマホ専用アプリ内で縮小して表示することで、サーバー側のHTMLコード生成プロセスをPC用のまま流用する予定であった。しかしながら、これまでの調査でPC用画面をスマホに流用した際の解答の入力がしづらいことは明らかであり、アプリによる単純縮小では対応できない。現在、一歩一歩学ぶ生命科学をサービスするMoodleにスマホ対応用画面を生成するプラグインの組込みを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず懸案となっているMoodleの画面のスマホ対応化を進める。同時にコンテンツデータをスマホ用に最適に分割する検討を行う。このようにして作成したアプリを、本年度調査を実施したA高校とB大学で試用し、生徒及び学生からアンケートのよりフィードバックを得る。ある程度アプリの仕様が決まったところで、アプリの開発は外部の業者に委託する。 本研究開発の最終チェックとして、B大学に12月に入学が決定し、その後、入学前学習が始まる入学予定者に対し、開発したアプリを配布して本格使用を開始する。入学予定者がPCを利用したかスマホのアプリを利用したかはMoodle上のアクセスログを解析することで区別できる。この解析結果と評価テストの得点状況を例年と比較し、使用感アンケートをまとめることで、本研究の最終調査とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の予算は主に1)アンケート調査を行う際のトナー等の消耗品代金、2)アプリの外注に使用されることになる。場合によっては、開発の遅れをとりもどすために、3)Moodle画面のスマホ対応化も外注する必要があり費用がかさむ。複数の業者から最も合理的な業者を選ぶなど、予算の節約を図りながら研究の完成を急ぐ。
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