研究実績の概要 |
学校現場で手軽に,授業中に組み立てて利用できる教育用放射線検出器の開発を行った.理科教育に携わる大学教員,兵庫物理サークルを中心とする高校理科教員や博物館学芸員等のグループで,放射線検出器の仕様について検討を行った.その結果,測定原理が分かり,計測のためのコンポーネントが見える,計数だけでなくスペクトラムが観察できる,特殊な部品は使わない等の条件で,福島の原子炉事故以来問題となっている放射性セシウムからのガンマ線を捉えることを目標にし,30台製作した. 主要コンポーネントとして放射線(γ線)のエネルギーを電気信号に変換するセンサー部にCsI結晶,フォトダイオードを用いた.また,電気信号をアナログ的に増幅するアナログアンプ部に電荷有感型増幅器,ピークホールド回路を用いた.放射線のエネルギーに比例する信号をデジタル値に変換して表示するデジタル表示部には波高弁別器,ADC,表示装置を用いた.これらを組み立て,γ線を正確に測定し,科学的にデータを分析・解釈・判断し,行動できる人材の育成をねらった. また,学生・生徒実験の開発や放射線教育シンポジウムを実施した.実験開発では,放射線防護の3原則である放射性物質から離れる,密度の高いもので遮蔽する,長時間接しないの基本を,定量的に測定しながら学ぶ教材や,β線が霧箱内の磁場によって回転し,さらに相対論を用いて,そのエネルギー分布を調べることができる教材を開発し,高等学校で実践してその効果を調べた.また,福島の現実に学ぶ教育を進め,環境放射線を計測しながら,除染の実態や住民の事故後の避難状況などを調査した. これらの成果は,シンポジウムや学会を通じて発表し,放射線教育やリスク教育等いろいろな分野の研究者が交流し,連携することの大切さをあらためて認識した.
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