項目反応理論(IRT)を用いて作成されたテストの成績は、通常、θという能力値尺度を用いて表示されるが、このθは、その算出に用いられた項目が異なっていても比較可能であるという利点を持つ。しかしθの算出は簡単ではなく、通常の受験生が行えるものではないため、受験生にとってθに対する不信感が生じることも否めない。 そこで、本研究では、項目特性が既知である項目からなるテストを受験した受験生が、彼らにとって計算が容易な重み付き項目得点を計算し、それを元にしてθを推定する方法、すなわち簡易推定法を提案した。また、その際必要となる重みの中で最も効率の良いものを、多くの反応モデル、特に、3PLモデルや段階反応モデルの様な重み付き得点という形での十分統計量を持たないモデルに対しても提案を行った。 具体的には,問題項目に割り当てる重み(配点)として、Mayekawa(2008)が提案した最適重みを利用した。この最適重みを部分採点モデル・一般化部分採点モデル等への拡張を行い,それらの重みの計算を実行するためのRプログラムを開発を行った。このRプログラムを用いて,実データへの応用を行い,最適重みを利用して採点した場合と,元からある配点を利用して採点した場合との比較を行った。さらに,項目パラメタが等化されてあり,能力値θが比較可能であるような複数の問題冊子に最適重みを用いる場合についてシミュレーションを行い,そのような場合の最適重みの求め方についての示唆を得た。
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