研究概要 |
実際のテスト構成では,しばしば複数等質テストが必要となる.例えば,資格試験などでは毎回の難易度が異ならないように, テストの統計的な性質, 具体的には, 得点分布や所要時間などが一定でなければならない.これまで複数等質テストはテスト管理者の勘と経験により構成されてきた.しかし, 近年,e テスティングの普及に伴い, テストの自動構成が可能となりつつある.2012年度では, 申請者は複数等質テストを自動構成する新しい手法を提案した. 複数等質テストとは, それぞれのテストに含まれるテスト項目は異なるが, 統計的な性質(例えば, 得点分布や項目反応理論に基づく情報量等)が等しいテスト群である. 本手法の特徴は, 与えられたアイテムバンクから最大数の複数等質テストを構成できることである. 具体的には, 複数等質テスト構成を最大クリーク問題として解き, 等質テスト間に項目の重複を許した条件でもテスト構成が可能な手法を提案した. これにより構成可能なテスト数を, 重複を許さない場合に比べ, 大きく増加させることができる.シミュレーション及び実データを用いた実験を行い, 計算を打ち切った場合でも, 本手法が他手法より多くのテストを構成できることを示した.しかし, 提案手法は計算コストが高く, 大規模なアイテムバンクでは計算を打ち切る必要がある. そこで最大クリーク探索空間を生成したあと,k番目までのクリーク候補をランダムに生成することにより近似的な最大クリーク探索空間を生成する手法を提案し,計算時間を減少させることを提案した.シミュレーションを行い、大規模アイテムバンクでは最も多くの等質テストを生成できることを示した.また,実際にリクルート社で用いられている大規模アイテムバンクにも適用し、提案手法が最大の等質テストを抽出させることを示した.
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