研究実績の概要 |
eテスティングは国際標準ISO規格で規定され,重要な要件として等質テスト生成が規定されるようになった.等質テスト生成とは,あらかじめ蓄積されたアイテムバンクから等質性の条件を満たすテスト群を可能な限り多く生成することである. Songmuang & Ueno [2011]はBee-Algorithmを用いてLinden[2000]の手法の計算量を大幅に減少させ,さらに漸近的最適性を保証するという画期的な改善を行い,複数等質テスト構成手法を実用化できるレベルに至らせた.しかし,生成テスト数は漸近的に最大になるものであり,厳密解ではない.一般に,アイテムバンクが高々2万項目程度しか持たない我が国の国家試験では,400程度の等質テストしか生成できないため毎日異なるテストを出題したら約1年で同一テストが実施されてしまう.そこで,本科研課題において,石井ら(2014)は, 複数等質テストを最大クリーク抽出法を用いて生成し,厳密に最大値を保証する手法を開発した.この手法により,生成される等質テスト数がこれまでの数十倍~数百倍にまで増加できる.しかし,計算量が大きすぎるという欠点がある.そこで, Ishii,Songmuang & Ueno[2014]は,クリークを厳密に探索せずに全グラフ集合のランダム部分グラフを探索しながら近似して最大クリークを見つける手法を提案し,大幅に計算量を減らすことに成功した.日本で良く用いられる20,000個程度の項目数を持つアイテムバンクから8000個以上の等質テストを生成できる手法を開発した.これらの提案手法は,情報処理技術者試験やリクルート社のテスト生成にすでに採用され,医療系大学間共用試験のeテスティング生成に採用される見通しで現在開発中である.以上のように社会的にも大きなインパクトを与えることができたと考える.
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