研究課題/領域番号 |
24650561
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
藤木 卓 長崎大学, 教育学部, 教授 (00218992)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 3D立体視 / 遠隔教育 / VR |
研究概要 |
民生用3Dビデオ・カメラが登場し3D立体視の環境は整いつつあるが,そのネットワーク伝送には業務用の放送関連機器等を必要とするため高価である。そこで,左右2台のPC映像による立体視映像の伝送法がある。しかしこの場合,左右映像で異なる遅延が発生する。この左右の遅延ずれの影響は,高速なインターネット接続環境であれば,ハイビジョン映像による立体視がほぼ問題無く実現できている。しかし,離島やへき地等のネットワークの整備が十分進んでいない環境で,しかもUSBカメラとPCで手軽に実現可能なテレビ会議ツールを用いる場合に,遅延ずれやネットワーク負荷の影響については,その解明に手が付けられていない。そこで本研究課題では,次の3点を目的とした。1)USBカメラを用いた簡易型3D立体視による遠隔対話環境(一方向)の構築,2)遠隔対話環境(一方向)の品質の評価,3)遠隔対話環境(一方向)の教育的活用場面の検討 平成24年度は,遠隔対話環境(一方向)の構築(目的1)を行った。映像生成及び伝送にはSkypeを用い,全画面表示で出力させることにより左右映像のウィンドウ位置調整の問題をクリアした。カメラは,画像センサー30万~300万画素の普及価格帯のUSBカメラ4種類を用意した。左右眼用のカメラ映像を簡易ビデオ会議ツールをインストールしたPCで生成させネットワーク伝送し,左右眼用の受信用PCで受信させた後,変換器等を経由させて3D用ディスプレイに出力させ,偏光メガネ装着により立体視を確認することができた。送信側の左右映像用のUSBカメラは,人の眼間距離に近い7cm程度で設定した。室内でのローカルなネット環境であれば,画像センサー300万画素のカメラでは,問題無く立体視が行えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画では,目的1)の「遠隔対話環境(一方向)の構築」が対象であった。そのために,映像伝送用のPCの選定・購入と簡易ビデオ会議ツール環境の準備を行うとともに,画像センサーの画素数30万画素から300万画素までのUSBカメラを準備した。受信映像は,既有の3D信号変換器を用いて立体視を行うことができた。この3D信号変換器は,同期信号発生器でHDMI-SDI変換器及び3D信号変換器での信号間の同期をとることで,3Dモニターへの立体視出力を可能としたものである。 カメラの個体差により画角が異なったため,左右映像のずれの程度が大きくなると,立体視が困難となる傾向が見られた。この問題は,3個以上のカメラを購入して,その中から画角が同程度のものを選定して用いることでクリアした。また,画素数が小さいカメラでは,三脚の雲台への固定ネジが標準搭載されておらず,治具を自作することでクリアした。 遠隔伝送時のネットワーク負荷の基礎データを得るために,カメラ1台だけでの長崎-静岡間における簡易ビデオ会議による映像伝送実験を行った。その結果,ほぼ一定のビットレートで伝送を行うことができたため,左右映像伝送時でも,大きなネットワーク負荷の問題は起こらないものと予想される。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,左右映像伝送による長崎-静岡間での遠隔立体視実験を進めることと,伝送画像の評価,教育的活用場面の検討が対象となる。 長崎-静岡間での遠隔立体視実験では,平成24年度の基礎実験で,ネットワーク負荷の状況は容易にクリアしているため,左右映像でも問題なく立体視できるものと考えられる。 伝送画像の評価では,評価用の画像の選定と撮影・保存,大学生を被験者とした実験,実験結果のまとめが必要となるが,学内での推進が可能であるため,容易に実施できるものと考えられる。 教育的活用場面の検討では,技術科教育に関わる学習内容を取り上げ,授業の場面を想定した検討を考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,長崎-静岡間での遠隔立体視実験のための旅費の支出,伝送画像の評価や教育的活用場面での検討に関する消耗品類の購入,3D立体視に関する情報収集のための調査研究旅費の支出が主に必要となる。
|