研究課題/領域番号 |
24650565
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
加藤 浩 放送大学, 教養学部, 教授 (80332146)
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研究分担者 |
葛岡 英明 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 教授 (10241796)
鈴木 栄幸 茨城大学, 人文学部, 教授 (20323199)
山下 淳 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 講師 (80345157)
久保田 善彦 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (90432103)
寺田 努 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70324861)
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キーワード | 教育工学 / 教育評価 / ベイズ推定 / 状況内評価 / 形成的評価 / モバイルデバイス / ジェスチャー認識 / 音声認識 |
研究概要 |
本研究の目的は、活動の現場で相互行為的に可視化される社会構築物としての「実践能力」に基づいた、新しい形成的教育評価の方法を開発することである。この目的を達成するため、(1)学習者が無自覚に他者に対して表出する評価の自動記録システムの開発、および(2)このシステムを協調学習の場に導入し実践を考察することで、教育現場での活用モデルの開発を実施する必要がある。 平成25年度は、上記のうち(1)に関する研究開発を実施した。システムが満たすべき要件は,能力が発揮されたその場その時において,その場にいる人々が他者の行為に対して行った評価を記録・蓄積することである。「評価」の方法は様々であるが、この研究では「頷き」と「つぶやき」から、実践中に学習者が自然に表出する行為を「評価」行動と定義しているため、実際に行われた数時間分の議論からこの条件に合致する評価行為を抽出し、行為として分類した後、この評価を自動的に認識するためのシステム設計と実装を行った。 また、「頷き」と「つぶやき」を自動検出するシステムの開発を行った。先行研究を参考に認識システムの選定を行った結果、頷きについては神戸大学の塚本・寺田研究室で開発されているジェスチャ認識システム、音声認識については京都大学で開発され、フリーソフトとして一般に公開されているJuliusを用いることにした。ただし、Juliusについては本来の目的が会話認識であり、「つぶやき」で用いられるような単語、例えば「なるほど」などの感嘆詞に相当する単語の認識に特化していないため、本研究の要件に合うよう、認識辞書などの新規作成を行った。 年度末にかけては、「頷き」の推定結果と「つぶやき」の推定結果を総合して、尤もらしい評価を推定するために、ベイズ推定を用いた評価推定システムの設計と実装を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システムの中核部分である「評価の自動認識」、すなわち「頷き」の認識と「つぶやき」の認識システムの開発において、ほぼ当初の計画通り進捗している。 本研究は「ジェスチャ認識」と「音声認識」という、各々の分野そのものが発展途上である技術を取り入れた、挑戦的な研究である。そのためには、各分野の専門となる研究の調査や研究者へのヒアリングなども必要と認識し、平成25年度の初めにヒアリング等を実施し研究実施内容の再検討を実施した。 検討の結果、ジェスチャ認識については、従来からジェスチャ認識技術において多くの成果を挙げている神戸大学の寺田准教授から技術指導を受けた上、平成26年度は研究協力者として本格的に参画して頂くことで、ジェスチャ認識技術の向上が見込めることになった。 音声認識については、筑波大学ほか各大学で音声認識システムを利用したシステムを開発している研究者の意見を参考に、音声認識技術の実践的な利用方法のほか、周辺技術に関して意見を頂くことで、研究方針がより明確となった。音声認識の分野においては、新たな研究分担者や協力者の追加はないものの、本研究の参画者らは音声認識技術に関する研究者らから常に技術協力を受けることでできる体制にあり、また随時アドバイスを受けているため、今後の開発においても研究開発に支障が出るような問題が発生することは無いと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前項の「現在までの達成度」にも記載したが、研究を推進するにあたり、ジェスチャ認識、音声認識を専門とする研究者との連携を行うことにより、当初の計画を達成できるよう研究を実施する。 現在実装中のベイズ推定を用いた評価推定は、母集団となるジェスチャ認識、および音声認識の結果が増えるほどより信頼性の高いデータとなることは明らかであるため、実装と平行して基礎データ分析のための討論実験を引き続き実施する。また、ベイズ推定による評価に対して評価者などが再評価する方法(ベイジアンネットワークなど)を採用することで、実践実験中でも常に新しいデータを維持できる手法などを開発する。 本研究に参画する研究者は複数の研究機関に所属しているが、研究の初期段階から毎月定例のミーティングを実施し研究の進捗状況や実験結果の討論行っている。このミーティングは引き続き実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内の学会に行く予定であったが、他の経費で支出できたため。 本年度の出張旅費で使用する予定。
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