研究課題/領域番号 |
24650568
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
櫻井 成一朗 明治学院大学, 法学部, 教授 (20202088)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 法的推論 / 仮説推論 / 学習支援 / 教育支援 |
研究実績の概要 |
法律の学習者が判決文のような法律文書の論理を理解しようとする際には、事実に法規を適用することによって前向きに演繹するのではなく、結論志向で理解せざるを得ない場合が少なくない。このような推論が必要とされる場合としては、下級審の判決を上級審が論駁する場合があるので、これに限定して考察を行った。 トゥールミンは議論を「事実」から「主張」を導く「保証」の枠組みで捉えるが、この議論図式を用いれば、下級審の議論図式と上級審の議論図式を視覚的に対比できる。単純な判決文の場合、上級審の判決はどの部分を攻撃し、論駁しているのかは明らかであるので、判決文の理解も容易である。一方、結論を導くための「保証」となる法規範が判決文中では省略されている場合には、学習者は法規範を補完できなければならない。判決文は事実に法規範を適用して結論を導出するのであるから、同一の事実に対して異なる結論であれば、適用する法規範が異なるか、法規適用の例外の認識が異なる事になる。議論図式を用いてこの点に着目すれば、下級審の判断と上級審の判断の違いは、どちらの違いなのかということを学習者は見出すことができる。したがって、議論図式として下級審及び上級審の判断をとらえるために、学習者は、まず下級審と上級審の判断の中の「事実」と「結論」を明確に識別できなければならない。その上で、「事実」にどの法規範が適用されるのかということをより深く検討することにより、法規適用の誤りは何かを発見できるようになることを、いくつかの判例の読解を通して確認できた。このような理解過程は、上級審の判断が内包するアブダクション(仮説推論)を知らず知らずに発見することであり、それを通じて自身もまたアブダクションを行っていることにほかならない。本年度は、このような形で学習者の理解過程の分析を行い、想定される学習支援システムの基本機能の再検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度は継続的に体調不良であったため、研究を進展させられる状態では無かったので、論文として成果を取りまとめられず、研究の進展は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
学習者の理解過程を仮説推論として整理したことにより、実判決文を用いた、学習者に対する実験が可能となったので、今年度は速やかに実験を行い、結果を取りまとめて論文発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は継続的な体調不良により、予算執行が出来なかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
基本的には、前年度の予算執行計画に基づき予算執行する。
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