本研究課題では,実空間と仮想空間をシームレスにつなぐAR学習支援システムの開発を目的とした.これまでにHMDを用いて教科書を閲覧するとコンピュータグラフィックスの地球と月が自転するモデルを重畳提示するシステムを開発した.また,このコンテンツをタブレット端末に実装し,大学生を対象に評価実験を行った.さらに,具体的な模型と連動して動くタンジブル学習支援システムを開発した.本研究課題では,タンジブル学習支援システムに,AR技術を用いて仮想シェードを重ね合わせることが可能な,AR学習支援システム(ARタンジブル学習支援システムと呼ぶ)を開発した.このシステムでは,これまでの仮想空間と模型との連動に加え,ARの技術を用いていることから,自身がみている視点とモニタに投影されている模型上の仮想の視点との関わりを認識しやすくなっている.学習者は,自身の視点を身体的移動によって変更することができる.また,CGを重ね合わせて理解を促進できることが期待できる.加えて,本挑戦的萌芽研究では,OpenNIを用いてシステムを拡張することを目指した.しかし,このプロトタイプ開発については継続することとなった.そこで,ここまでの研究成果を基に,中学生を対象としてARタンジブル学習支援システムの有用性を検討した.広島県内の公立中学校の生徒(3クラス)を対象として,空間的思考力に関する調査を実施した.そしてARタンジブル学習支援システムの有用性を示した.これらの成果は,日本教育工学会において公表した.今後の課題は,タンジブル教材を用いた空間認識力の育成を,理科だけではなく,数学,技術科,情報科などの領域に拡大し,領域横断的な能力育成のカリキュラムとして検討することである.
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