研究課題/領域番号 |
24650572
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森藤 ちひろ 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教(常勤) (10529580)
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研究分担者 |
高橋 敬子 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (50309449)
鈴木 敬一郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70221322)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | コーチング / コミュニケーション・スキル / 学習支援 / 自己効力感 / 自己学習 / 自己評価 |
研究概要 |
近年、医療現場においてコーチング・コミュニケーションの有効性が認知されてきている。本研究は、そのコーチングを用いたコミュニケーション・スキルを向上するための自己学習支援システムの開発を目的とした研究である。医師だけでなく、看護師、薬剤師等の医療職全般に利用可能な教育システムの開発を行う。具体的な研究項目は、①履修科目とコミュニケーション・スキルの関係(年次比較)、②学習環境に対する認識変化と成長プロセス(個人の定点観測)、③コミュニケーション・スキルの習熟過程を把握する評価指標の提案である。この3つを明らかにした上で、Web上で学習者がコーチングを体得し、自己評価と自己学習を促進するシステムの構築を目指す。 初年度は、医師だけでなく、看護師、薬剤師等の医療職全般に利用可能な医療系教育システムにするために医療現場におけるコーチングの活用およびコーチング教育の現状を分析した。その結果から、カスタマイズが可能なレスポンスシステムの必要性が明らかになったため、効果的に成長プロセスを提示できるシステムの開発を行った。 また、国内外の医学教育及び臨床現場におけるコーチング・コミュニケーション教育の実践例について情報収集した。加えて、直接的な学習での習得状況を把握し、自己学習支援システムに反映させるために、医療従事者に対するコーチング研修を実施し、医療現場で求められるコミュニケーション能力の調査と研修内容に関する評価を収集した。 また、24年度の研究成果をもとにコーチング教材開発経験者と数回にわたりディスカッションを行い、システム内における教育内容の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、主にシステム開発に注力をした。特に、自己学習支援において重要なフィードバックシステムを作成した。どのようなフィードバックが学習者本人にとって自分の成長プロセスを認識しやすく、かつ学習者のモチベーションの維持・向上につながるかについての検討に時間を要した。 達成度「おおむね順調に進展している」を選択した理由は、上記のシステム開発には時間を要したが、システムに関しては見通しがついたことと1年目で達成する予定にしていたコミュニケーションスキルの測定尺度開発まで進めることができたからである。コミュニケーションスキルの測定尺度について先行研究をレビューし、原案を固めつつある。現在、早急に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画において予定していた「1.WEB調査実験システム「SEN」をコミュニケーション・スキルの自己評価及び自己学習システムへ改良する」は80%完了した。「2.学習支援システムMoodleの機能を充実させ、本研究が着手したSEN改良システムと連動させる」はまだ未着手である。2.については下記のように変更し、対応していく予定である。 1年目の研究を通して、本研究が取り組むシステム開発のニーズは医療系学生だけでなく医療現場の従事者の教育にも多く存在することがわかってきた。また、そのニーズに対応するシステム開発は活発ではないことがわかった。そのため、大学のインフラであるMoodleとの連動は汎用性に欠けると判断し、2は「2.本研究が着手したSEN改良システムがあらゆる機関で使用可能になるよう汎用性を高いシステムに改修する」と修正する。また、1年目の研究の結果、医療系学部以外の学生教育支援システムとしての開発の意義が見出されると推測されたため、そのニーズについても配慮し、システム開発を行っていく。 25年度は、コーチングのアセスメントシート、個別ポートフォリオ評価の作成と分析システムを追加し、評価結果とスキルアップ・プロセスのレポート機能を開発する。その後、システムを実際に稼働させ、システムの評価を行っていく予定である。 システムのテスト、被験者による効果測定については、計画においては学生を想定していたが、医療従事者も対象に入れて計画している。他のコミュニケーションが重要となるソーシャル・サービス等の業種にも活用できる教育支援システムをめざし、評価の際にはリサーチ会社のモニターも用いる。実用化に向けて学会発表等で広く発信し、修正を繰り返し行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は25年度の計画に費用を回すため、312,715円を残し25年度に繰り越した。25年度は1,612,715円を使用し、研究を進めていく予定である。 具体的な支出は、システム開発費20%、旅費30%、調査30%、物品費20%で予定している。 システム開発については、開発業者に依頼し行う予定である。旅費は、国内と海外の学会参加に必要な旅費を予定している。昨年情報収集のため参加したINTERNATIONAL CONFERENCE ON COMMUNICATION IN HEALTHCARE 2012が非常に有益であったため、25年度もモントリオールで開催される同学会コンファレンスに参加する予定である。調査については、汎用性の観点からリサーチ会社に依頼をしモニターを用いた検証を計画している。物品費は書籍、WEB関連物品等を予定している。
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