研究課題/領域番号 |
24650574
|
研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
工藤 隆男 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10110214)
|
キーワード | レスポンスアナライザ |
研究概要 |
レスポンスアナライザは学習者個々の理解度を把握しながら授業を進める上で極めて有用であるが、有線方式の場合、配線制約から使用される教室が制限されることが解決すべき課題である。そこで、本研究では、無線センサネットワークに着目したレスポンスアナライザを試作し、その実用可能性について実験的に評価を行うことにし、見通し距離で数十mの無線通信を可能とするZigBee方式の無線モジュールを用い、クラス定員40名程度の一般教室におけるデータ収集については十分通信可能であることを、1台の親機と数台の子機によるプロトタイプを試作・開発し、実験的に確認した。 25年度は、先ず、親機に備える機能について検討し、1クラス40名程度を想定し、SP分析を主とする授業分析機能を備えたシステムを試作・開発した。子機からのデータ収集のために親機には1個のZigBeeモジュールをUSB接続したウインドウズパソコンを用い、その機能として、子機からのデータ収集と、学習支援や授業分析に有用なデータ分析・表示をリアルタイムで行う機能を実現した。また、システムの改良や機能拡張などを容易にするため、親機の機能についてはすべてExcel_VBAにより実現した。子機には、多肢選択式の回答機能だけにとどまらず、実験データを直接収集可能とすることについて検討した。温度や圧力などの物理量を電流や電圧などの電気量に変換することができれば、現段階で試作した子機を用いて物理量を取得可能になる。これを実現するための1つの方法としてアナログ入力ディジタル出力機能を備えたマルチメータを用いればよいことを確認できた。 また、子機の量産容易性について検討した結果、Arduinoマイコンとシールドを組み合わせることで実現できることを実験により確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無線方式の選択に当たり、実験室環境で使用可能な代表的無線方式であるWiFi、Bluetooth、ZigBeeの中から、レスポンスアナライザ試作に必要な電源電圧や接続可能な端末数などの条件に基づき、ZigBee方式のモジュールを用いることとした。得られた成果は以下のとおりである。 1、多肢選択方式回答機能を備えた子機のプロトタイプ試作についてはArduinoマイクロコンピュータをベースとした。学生の使いやすさを考慮して、多肢選択方式における解答番号の入力・表示機能や、解答訂正機能、データを転送できたことを知らせる機能を実現した。 2、親機のプロトタイプには、子機からのデータ収集・表示機能を備えることとし、表計算ソフト用プログラミング言語であるExcelVBAを用いて実現した。この言語を用いることで、機能の拡張性を大幅に向上できた。 3、レスポンスアナライザにおける必須条件は、子機・親機間の安定したデータ収集である。データ収集の信頼度は通信方式に左右されがちである。そこで、データ通信の信頼度を実験的に評価するため、子機が生成する解答データの構成を{データの先頭を示す符号、子機の識別番号、解答選択番号、データの末尾を示す符号}とし、親機が各子機を順番にアクセスするポーリング方式で、データを収集後、未収拾の子機を再度アクセスする方式とした結果、ほぼ100%に近いデータを収集することができた。 4、量産体制に向けた子機のハードウェア構成方法を見直し、Arduinoマイコンを用いることにした。また、アナログデータ収集機能の実現は、ディジタル出力機能を備えたマルチメータの出力を子機に入力することで実現可能である見通しを得た。
|
今後の研究の推進方策 |
1クラス10班程度を想定し、実験データを収集できる子機を試作する。子機の構成のためには、電流や電圧などのアナログ量を2進数列としてディジタル出力できるマルチメータと、2進数列から電流や電圧などの元の量を復元し、これらをテキストデータとして無線で親機に送る機能をArduinoマイコンにより実現することにする。子機・親機間の通信のためにはポーリング方式を用いる。複数の子機に異なるシリアル番号をあらかじめ付加しておくことで、親機からシリアル番号を指定したコマンドを送信することにする。これにより複数の子機との通信を実用的時間内において実行可能と考えている。 次に、親機から行う子機の操作に必要となるコマンド操作画面表示、および実験データの収集・表示、作表や作図機能など親機に関する機能実現のためには、Excel-VBA言語を用いる。Excel-VBAは、表計算ソフトであるエクセルをインストール済みであれば、誰でも自由に使えるプログラム開発用言語である。例えば、学習者の視覚的理解を促すためには、子機からの実験データをセルに転送するごとに、容易にかつリアルタイムに各種グラフをダイナミックに変化させたり色を変えて強調させたりできるなど、多彩な教材を作成する原動力となることが大いに期待できる。
|