過去においてアラブ・イスラーム文明の繁栄を支えた信仰と科学を融合させる精神は、現代の東南アジア、特にインドネシアで顕著に認めることができた。宗教的知識人(ウラマー)から市井の人々まで、多くの人々が信仰に基づいた現代社会の構築に日々深く関係することで、イスラーム的市民社会が開花している。これに対して中東のエジプトの場合は、こうした伝統的精神は失われつつあり、宗教は宗教として、現代科学や社会とは一線を画そうとする意識が広がっている。繁栄する東南アジア社会、対して停滞する中東アラブ社会の相違を裏付ける文化的・社会的な一側面を、学際的な観点により確認した。
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