本研究の当初の目的は、近現代科学史資料の体系的・効率的な収集・保存のための方法論の確立に向けた実践的考察を、東京大学大学院情報学環社会情報研究資料センター(以下、「センター」)収蔵の地質学者・坪井誠太郎に関する資料(以下、「坪井資料」)の分析によるアーカイブ化の試みを通して行うことであった。 ところが、平成26年度に入ってから、未整理分の坪井資料を保管している施設の建て替えが決定され、平成26年末までに坪井資料を運び出す必要が生じた。同資料の移転先を確保することが急務となったことから、当初目的を踏まえつつ、以下のように研究を実施した: 1)坪井資料の移転:資料の価値は高く、散逸・廃棄を防ぐ必要があった。また、諸事情により東京大学内に移転先を確保することは困難だった。検討の末、国立科学博物館筑波研究施設に移転することとなり、一部を除き年末に移転(寄贈)を行った。 2)研究成果の発表:1)を実現するためにも、坪井資料の「研究者資料」としての有用性を広く訴える必要があり、国内外の科学史および地球科学史関連の学会で口頭発表を行った。さらに、当初目的における「資料収集・保存の方法論確立にむけた実践的考察」の観点から、本研究のまとめとして、「複数の組織を横断しての資料調査の実施」についての実践報告を、センターの『社会情報研究資料センターニュース』第25号に発表した(pdf版のurlは<http://www.center.iii.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/25-1.pdf>。 なお、当初目的の一つである坪井資料のアーカイブ化については、資料の詳細調査と併せて来年度以降、国立科学博物館において数年にわたって実施・検討される予定であり、本研究者も参画することになっている。
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