本研究は、2011年3月の東日本大震災によって甚大なる被害を受けた福島県において、「ふくしま歴史資料保存ネットワーク」の一員として歴史資料保全活動に関わった経験から、福島県民にとってのアイデンティティーの基盤となる歴史資料を保全し、考古学・自然史などとの学際的研究により地域像の創出と深化をはかる地域総合資料学の構築をめざし、学術面から災害復興に寄与することを企図するものである。 平成27年度には本研究の総括的役割をもつ成果を、学界向けに『歴史学研究』への寄稿、歴史科学協議会大会報告および『歴史評論』への掲載、地元行財政界向けとして『財界ふくしま』への寄稿により公表した。歴史資料・震災遺産の保全と活用の意義を市民と共有するため、9月に「ふくしま再生と歴史・文化遺産2015Ⅱ」を郡山市で主催した。3月には富岡町主催のシンポジウムで「富岡町の地域歴史資料を護る活動と福島大学・ふくしま史料ネット」と題して講演した。同じく3月には、国立文化財機構との主催で実行委員会形式による「第2回全国史料ネット研究交流集会」を郡山市にて開催し、「東日本大震災から丸5年経った福島と史料ネット」と題して報告した。 以上の成果を踏まえ、研究最終年度にあたって3月に報告書を上梓し、既発表論文と併せて本研究の総括とした。
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