研究課題/領域番号 |
24650585
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
百原 新 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (00250150)
|
研究分担者 |
工藤 雄一郎 国立歴史民俗博物館, 考古研究系, 准教授 (30456636)
沖津 進 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (70169209)
|
キーワード | 情報考古学 / 植生史 / データベ-ス / 大型植物遺体 / 植物同定 / 古植生復元 |
研究概要 |
全国の遺跡調査報告書に記載されている種実類や葉などの大型植物遺体出土記録をデータベース化することで,最終氷期から現在までの植物分布の地理的変遷を明らかにした.それにより,各植物の時間的・空間的分布と,既存の木製品データベースや考古学資料,花 粉分析資料,環境変遷データとを比較することで,栽培植物を含む植物群の分布域変遷におよぼした人為的影響(生業様式や人口密度の変化,文化や技術の伝搬などとの関係)を明らかにすることを目的とした.植物遺体出土記録データベースを公開することで,同定 ・記載・検出方法に関する植物考古学研究基準と,栽培植物の出土編年体系の確立をめざし,発掘現場における植物遺体記録の精度向上を図る.本年度はデータベース構築を中心に行い,国立歴史民俗博物館(佐倉)の書庫で,百原・工藤の指導のもと研究補助者が遺跡発掘報告書を閲覧し,大型植物遺体(種実類)出土記載のある報告書をコピー,エクセルに入力を行った.北海道~中部地方の各県を中心にデータベース化を行った.さらに縄文時代~古墳時代にかけての泥炭層が露出し,大型植物遺体が豊富に含まれる市川市道免き谷津遺跡を,関東地方南部の低湿地遺跡のスタンダードと位置づけ,縄文時代から弥生時代への転換期の環境変化に関する調査を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物遺体のデータベース化作業については,おおむね順調に進展し,北海道から中部地方までの遺跡データの入力をほぼ終了した
|
今後の研究の推進方策 |
大型植物遺体記録のデータベース化を近畿地方以南の資料を中心に行い,各植物の用途を木製品データベースや民俗例に基づいて明らかにし,これまでの遺跡発掘調査で明らかになっている生業様式の時代的・地理的変遷との関連を検討する.それにより,生業活動様式の変化がもたらした人為的な植物移動と,気候・海水準変化,火山活動などの自然環境がもたらした影響とを明確化するとともに,現在の日本列島の植物の分布形成や栽培植物の形成・伝搬が,人間の生活様式の変化と自然環境の変化との関係でいつ,どのようにおきたかを明らかにする.縄文時代から弥生時代への環境変遷の地域対比の必要から,市川市北部道免き谷津遺跡を関東南部のスタンダードと位置づけ,環境変遷と人間活動との関係に関する資料や,年代測定資料を収集する.データベースの公開方法について検討を行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
委託予定であった遺跡の放射性炭素年代のサンプル調整に手間取り,来年度に分析委託をすることにしたため. 本年度は,縄文時代から弥生時代への過渡期の放射性炭素年代を解明するための,年代測定委託費用に重点的に使用する予定.
|