沖縄県石垣島の白保竿根田原洞穴遺跡から産出した後期更新世~完新世の哺乳類遺体の系統分類学的研究と生層序学的研究を継続して行い、この遺体群集の内容やその時間的変化を、これまで以上に明らかにするように努めるとともに、それから推定される古環境についても研究を進めた。この遺体群集の特徴やそれのもつ意味をさらに明確にするためには、それを他地域の同時代の群集と比較する必要がある。そこで、1)琉球列島の他の島の遺体群集、2)日本本土の遺体群集、3)台湾の遺体群集との比較を行うためのデータの収集を、それぞれの地域での野外調査や標本調査をとおして行った。収集したデータと白保竿根田原洞穴遺跡の群集で代表される石垣島の後期更新世~完新世の動物群とを比較すると、宮古島や沖縄本島などの琉球列島の他の島の動物群とは、非飛行性の種類が互いに大きく異なっているが、飛行性の種類はよく似ていることが明らかになった。一方、日本本土や台湾のものとは非飛行性のものばかりでなく、飛行性のものも大きく異なることが明らかになった。このような研究で得られた成果は、それぞれの地域ごとの個別の論文や研究発表として公表するとともに、全体を見通した総括的な論文を執筆して、国際誌(Quaternary International)に投稿し、査読者から肯定的な意見をもらって受理に向けた原稿の調整を行った。
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